原子力規制委vs朝日新聞、ガチンコ批判の応酬 放射線監視めぐり「非常に犯罪的」「住民安全考えているのか」

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   原発周辺の放射線観測装置(モニタリングポスト)の設置をめぐり、朝日新聞と原子力規制委員会の応酬が続いている。朝日新聞は、再稼働された九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)周辺のモニタリングポストの「ほぼ半数が事故時の住民避難の判断に必要な放射線量を測れない」と1面トップの記事で指摘した。

   原子力規制委員会は現状に問題ないという立場で、田中俊一委員長は記事が「犯罪的」だと異例の表現で非難した。だが、朝日新聞側も「自治体の避難態勢が少しでも充実することを目指して掲載したもの」だと反論している。

  • 3月14日1面トップの記事(左)が「犯罪的」だと非難された。朝日新聞は3月17日に、批判に対する「見解」(右)を掲載した
    3月14日1面トップの記事(左)が「犯罪的」だと非難された。朝日新聞は3月17日に、批判に対する「見解」(右)を掲載した
  • 3月14日1面トップの記事(左)が「犯罪的」だと非難された。朝日新聞は3月17日に、批判に対する「見解」(右)を掲載した

朝日社説「住民避難の判断データ得られない」

   問題とされたのは、朝日新聞の2016年3月14日付朝刊の1面トップに「避難基準値、半数測れず 川内原発周辺の放射線量計」と題して掲載された記事(東京本社14版)。

   東京電力福島第1原発後に改訂された原子力災害対策指針では、原発事故が起きた場合、5~30キロ圏はまず屋内退避したうえ、毎時20マイクロシーベルトが1日続いたら1週間以内に、毎時500マイクロに達したらすぐに避難することを定めている。記事では、川内原発の5~30キロ圏にある48台のポストのうち、22台が毎時80マイクロまでしか測れないことを指摘。こういったことを前提に、記事のリード文では

「ほぼ半数が事故時の住民避難の判断に必要な放射線量を測れない」
「事故時の住民避難の態勢が十分に整わないまま、原発が再稼働した」

などと川内原発の再稼働を非難していた。14日の紙面では3面にも「避難どう判断、住民に不安 原発周辺、線量測定の態勢不十分」と題した関連記事を載せ、15日にも社説で「放射線量計 事故の教訓はどこへ」と題して、

「事故時に住民を避難させる必要があるかどうか、判断するためのデータが得られないことを意味している。それでも、再稼働させている。住民の安全をどう考えているのだろうか」

と改めて再稼働を批判した。

規制委「『半分ぐらいが測れない』は当たり前」

   これに対して、原子力規制庁は3月15日にコメントを発表。モニタリングの体制について「継続的に充実していくことが重要」だとしながら、

「原子力災害が発生し放射性物質が放出された場合には、緊急時モニタリングを実施して防護措置を実施すべき範囲を特定することがUPZ(編注:緊急時防護措置準備区域)内全域で可能な仕組みが整備されていると判断している」

などと現時点で特段の問題はないとの見方を示した。翌3月16日の原子力規制委員会の定例会でも、田中氏は

「立地自治体に無用な不安をあおりたて、非常に犯罪的」

だと朝日の一連の報道を非難した。その後の記者会見でも、

「『半分ぐらいが測れない』とか『高い方が測れない』というのは、これは当たり前のこと。測れないことが分かっているから、低い方を測るもの、高い方を測れるものというのを適宜配置してあるということ」

などと説明した。

記事は「自治体の避難態勢が少しでも充実することを目指して掲載」

   田中氏の発言は、朝日新聞も翌3月17日の紙面で伝えた。記事では、14日の記事を「自治体の避難態勢が少しでも充実することを目指して掲載したもの」だと指摘。朝日新聞社広報部も、「当該記事については複数回、原子力規制庁幹部に取材を重ねたものです」とのコメントを出した。

   これとは別に、17日の紙面では、取材の趣旨を説明する記事も掲載した。それによると、500マイクロを計ることのできるモニタリングポストの数に着目した理由を

「原発事故で放射線量が急上昇した場合に5~30キロ圏の住民をすぐに避難させる大切な指標になる」

ためだと説明。鹿児島県以外の20道府県では、計画中のものを含めるとほとんどの地点で500マイクロまで測れるようになっていることを指摘しながら、

「福島の事故では高い放射線量の地域が広範囲に広がった。毎時500マイクロまで測れるのは当然」
「500マイクロまできちんと測れるようにすることが県民の安心・安全につながる」

といった自治体担当者の声を紹介している。現状の川内原発周辺のモニタリング体制が不十分だとの見方を改めて主張した。

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