2016年のプロ野球は開幕できるのか。盟主・巨人での野球賭博に続き、複数のチーム内でのギャンブルも表面化し、球界は動揺する毎日だ。東京五輪の追加種目にも影響するとの声も出ている。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)
50年近い取材でも聞いたことがない
半世紀近くプロ野球を取材してきたが、今回の一連のトラブルは従来なかった。
巨人の高木京介投手が球団4人目の賭博関係者として実名報道された。
「怖くなった」
2016年3月9日の記者会見でこう告白したのだが、反社会的な人間と付き合いができた結果のお決まりのコースである。
それから数日後、今度は巨人のチーム内の金銭やりとりが暴露された。試合で円陣を組んで、いわゆる気合をいれる儀式にからんでお札が乱れ飛んでいたというのである。
声を出す選手が「声出し役」で、試合に勝った場合は円陣に参加した選手一人から5000円ずつ取り、負けた場合は逆に1000円ずつ払うのだという。声出し役が胴元ともいえる。
巨人フロントは声を出す行為を「験担ぎ」と言い、金銭の移動は「ご祝儀」と説明している。そのほか、ノックでエラーしたときも金が動いたとされる。ご祝儀だらけなのである。
ファンを裏切るという意味では、単独で野球賭博を行う以上に罪深い。巨人に加え、阪神も西武もやっていたと認めているのだから、どうしようもない。
「レベルが低すぎる」「験担ぎに金が必要か」
外部の声は厳しい。
年間144試合で総額いくらのカネが動いたか
プロ野球界には古くから報奨金や罰金制度がある。報奨金とは、試合で殊勲打を放った打者や、勝負どころで抑えた投手らに「監督賞」などの名目で与えられるボーナス。罰金は、サインの見落とし、あるいは門限に遅刻したなどのときに取られるというものだ。
それらはほとんどの球団で行われているが、今回のように、円陣で金が動くというのは聞いたことがない。
当該球団は「野球協約には抵触しない」と口をそろえている。抵触すれば「出場停止」などの処分に結びつくことになり、そうなると一軍選手が消え、とても試合にならない。開幕延期、今シーズン中止まで行きかねない。
その3球団は、以前流行った「みんなで渡れば怖くない」の手段に出た格好である。
現実問題として、毎試合「験担ぎ」しているから、1シーズンで1球団は144試合を行うから、総額でいくら金銭が動いたのか計算すべきだろう。複数球団が分かっているので、それによっては「いっぱしのバクチ」になると思われる。
「東京五輪に影響がないとはいえない」
野球は今年、正式種目に追加される第1候補である。プロ野球のやっていることは五輪の精神とは真逆だから、そう懸念するのは当然だ。プロ野球選手は参加しない、とでもしないと収まらないかもしれない。
「まだ、何かある」
球界関係者は不安だらけである。