肺炎や中耳炎、淋病の抗生物質が効かなくなった
実際、欧米では肺炎に効果があった抗生物質カルバネムが効かない耐性菌が増え、現在、一部の国では半数の患者に効果が出ない状態だ。また、淋病の治療に使うセファロスポリンも効かなくなり、世界的に淋病が急増する原因になっている。日本でも年間50万人がかかる中耳炎に耐性菌が増えた。
こうした中、2015年11月、国際医学誌「ランセット」が衝撃的な論文を発表した。中国・広州にある華南農業大学の劉建華教授らの研究チームが中国南部で、あらゆる抗生物質が効かない、非常に致死率の高い「スーパー耐性菌」を発見したというのだ。
抗生物質の中には「ポリミキシン」という「最終兵器」といわれる薬がある。ポリミキシンは、殺菌作用が非常に高い代わりに人体の細胞まで破壊するため、重い聴力障害や神経障害の副作用がある。ほかの抗生物質が効かず、命を救うにはこれしかないというギリギリの時まで使うことは稀だ。その「ポリミキシン」さえ無効にするパワーがあるという。
この細菌は、家畜市場の肉のサンプルから15~20%、肺炎患者の便のサンプルから1.2%の割合で見つかった。中国の1地域に封じ込めることができるか、世界の運命がかかっている。