【震災5年 絆はどこに(2)福島県いわき市】
駅前から復興を発信する「夜明け市場」 被災者支援の枠超えて地域発展に貢献

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母に懇願されてUターン、自力でリフォームして開店

   いわき市は大震災の被災地であると同時に、東京電力福島第1原発の事故で避難してきた大勢の人を受け入れている自治体でもある。

   被災地として、大震災から5年が経過してもその傷跡は残っている。市中心部から電車で10分強の距離にある久之浜町では、津波で68人が亡くなった。海岸沿いの広い地域では今も災害復旧・復興工事が続いており、家を失った人々は今も以前の土地に戻れていない。

   半面、福島県内で例外的に人口が増えているという事実もある。2015年国勢調査(速報値、2015年10月1日現在)によると、県全体の人口は前回調査の2010年比で5.7%減と過去最大の減少幅となり、大半の市町村で人口減となるなか、いわき市は同2.1%増だった。原発事故の避難者のほか、復興関連事業の作業員を多く受け入れているのが原因とみられる。JRいわき駅周辺には、新しく建設されたビジネスホテルが並び、記者が訪れた2016年3月の土曜日夜は駅前の飲食店街がにぎわっていた。

   「夜明け市場」で2013年2月に居酒屋「旬゛平」を開店した草野淳一さんは、Uターン組のひとりだ。東京・四ツ谷で居酒屋を経営し、軌道に乗っていたところで震災が起きた。地元・いわきに住む母親から「帰ってきて欲しい」と頼まれ、決意を固めたという。「夜明け市場」の店舗スペースを見つけたのも、母だった。当時は復興に向けた建設ラッシュの影響のためか、近くで内装業者が見つからず、自力でリフォームして開店にこぎつけたという。

   いわきでの飲食店経営は初めてとなる草野さんにとって、開店当初は手探りだったが、仕事帰りの人や若者でにぎわうようになった。3年が過ぎた今、経営は順調のようだ。

「県外から福島を応援に来てくれる人もいます。地元の人間として、素直にうれしいですね」
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