「お母さん今どこにいるの?家の中どんどん水だらけになってきて流されちゃうよ」「助けに行くから待ってて」――東日本大震災発生時、親子が交わしたとされるこんな「LINE」のやり取りが、ある学校でプリントとして配布されたらしい。
しかし、震災当時まだLINEはリリースされておらず、当然このやり取りもウソ。一見美談に見えるこうした「デマ」を広める心ない人たちにひっかからないよう、ネット上では注意を呼びかける声に関心が集まっている。
東日本大震災当時、LINEは存在せず
学校からの3.11についてのチラシいう趣旨の画像がツイッターに投稿されたのは、2016年3月11日。震災教育の授業中に配られたのだろうか。画像を見る限り、問題の「LINE」画像は、14年放送のラジオ番組で紹介された震災時のエピソードと並んで印刷されている。
「お母さん今どこにいるの?結衣どうしたらいい...家の中どんどん水だらけになってきて、結衣流されちゃうよ。ねえお母さん早く帰ってきて、すごい揺れてるよ。まだ死にたくない」
という子供のメッセージに、母親が
「お母さんは無事よ 結衣のこと助けに行くから待ってて 大丈夫よ!」
と返している。
プリントには、「これは東北震災の時の親子のLINEです。お母さんが最後に送ったLINEは結衣ちゃんに既読されることはなかった。これが親子の最後の絆」との一文が添えられている。
「美談」として紹介されているエピソードだが、完全なデマだと言える。なぜなら、LINEがサービスを開始したのは11年の6月23日。震災当時、まだLINEは存在していなかったからだ。当然、プリントで紹介された画像は震災後の「創作」である可能性が高い。
16年3月12日付け朝日新聞電子版記事によると、そもそもLINEの「既読」機能自体、「相手に返信する余裕がなくても、既読と分かれば安心する」といった災害時の要請から実装されたものだった。
2012年から画像が出回っていた
実は、このデマ画像自体は2012年頃からネット上で広まっていた。影響力のあるツイッターアカウントにもたびたび取り上げられ、時に数千回もリツイートされた。
しかし、デマには違いなく、LINE株式会社の舛田淳取締役も12年12月、「こういう嘘はみんなが嫌な気持ちになります」とツイートし、拡散しないようネットユーザーに注意を促している。12年段階で、デマ拡散阻止のためのまとめ記事も「NAVERまとめ」で作られていた。
とはいえ、LINEトークの投稿時間を津波到来時刻に近い15時前とするなど、画像は当時の状況を踏まえながら巧妙に作られている(編注:実際の津波到達時刻は15時過ぎ)。デマだと気付かない人も多いのだろう。
プリントを配った学校関係者もその1人だったようで、投稿者は、きちんと調べてから渡してと注意を呼びかけている。
ツイートは3月15日18時半までに2050回以上リツイートされ、多くの人々の関心を集めている。