不適切会計をきっかけに業績悪化に苦しむ東芝は、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業を、「Midea(ミデア)」ブランドを展開する中国家電大手の美的集団への売却を含む事業再編を検討している。
かつては「お家芸」といわれ、日本の高度成長を支えた白物家電は、シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されることが決まったばかりだが、「家電の東芝」も外資系の傘下に入ることで、その看板を下ろすことになりそうだ。
白物家電事業は1800人を削減
日本経済新聞は2016年3月15日付で、東芝が冷蔵庫や洗濯機など白物家電事業を手がける子会社の東芝ライフスタイルの株式の大半を数百億円程度で売却する方向で、中国の家電大手「美的集団」と最終調整に入ったと伝えた。
この報道に、東芝は「当社から発表したものではない」としたうえで、「家電事業は他社との事業再編も視野に入れ構造改革を進めることで協議しているのは事実だが、現時点で個別企業と具体的に合意した事項はない」とコメントしている。
売却先として名前があがった美的集団(ミデア・グループ)は、エアコンや洗濯機、冷蔵庫などの製造に強みをもち、2014年の売上高は約2兆6000億円。東芝の白物家電事業を買い取ることで、日本や東南アジアへの販路を拡大するのが狙いとみられる。
一方、東芝の白物を含めた家電事業は赤字見通しが続く。これまで安定した事業だった白物家電は、現在は多くをインドネシアなどの海外で生産しており、アベノミクスによる円安の影響で採算が悪化している。
すでに東芝は2015年12月に発表した「新生東芝アクションプラン」の中で、家電部門は16年3月末をめどに、現在1万4600人いる国内外の社員を1800人削減するとしていた。さらに、インドネシアで生産している二層式洗濯機とテレビの工場を閉鎖。その土地と建物を中国のスカイワース社へと売却することを決めているほか、スカイワース社が5%ずつ出資する二つの中国現地法人、東芝家電製造(南海、冷蔵庫と洗濯機を生産)と東芝家電製造(深セン、掃除機などを生産)の再編も視野に入れている。
そうしたなか、経営再建中のシャープが政府系ファンドの産業革新機構が提案していた、東芝を含む「日の丸」家電による再編を見送り、鴻海傘下での経営再建を決めたことで、東芝の白物家電は「行き場」を失った。
日立製作所など他の家電メーカーも、東芝の白物家電事業の引き受けには消極的のようで、外資系への売却しか手立てがなくなったのかもしれない。