軽減税率になれば「出前」の方が安くなる? 麻生財務相も認める「外食店の混乱」

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   消費税の軽減税率に関する議論が国会で続いている。政府は低所得者の痛税感緩和などを強調するが、野党はペットフードなどの具体例を挙げ、対象品目の分かりにくさを追及し、麻生太郎財務相自ら「混乱は避けられない」と認めるなど、疑問は容易に解消しそうにない。

   消費税率を10%に引き上げる2017年4月に軽減税率導入を導入することを柱とする2016年度税制改正関連法案は、3月1日、2016年度予算案とともに衆院を通過し、参院での審議に付されている。酒類と外食を除く飲食料品を軽減税率の対象とし、税率をいまの8%のまま据え置くものだ。

  • 同じ人が作った同じそばでも、店内で食べるのと出前とで税率が変わる?(写真はイメージ)
    同じ人が作った同じそばでも、店内で食べるのと出前とで税率が変わる?(写真はイメージ)
  • 同じ人が作った同じそばでも、店内で食べるのと出前とで税率が変わる?(写真はイメージ)

「出前は配達なので軽減税率」と主税局長

   国会では、消費者や事業者らが軽減税率の対象商品かどうかで迷う事例が相次いで指摘され、衆院での議論の過程では政府側の答弁もかなりブレた。

   「そばをそば屋で食べると税率10%、出前は8%。食べるものも作る人も同じなのに、税率が違うのは合理的なのか」。2月24日の衆院財務金融委員会で、野党議員の質問に対し、財務省の佐藤慎一主税局長は「出前は配達にあたる。ネットスーパーの宅配とのバランスで8%が適当だ」と答弁したが、野党側は「出前が増えるかもしれない。出前の方がコストがかかり、家族経営の小さな店に新たな負担を求めることになる」と批判した。

   ことほどさように、軽減税率の対象とならない「外食」について法律の定義がないこともあり、いろんな場合を想定すると、困る例が次々に出てくる。

   政府は軽減税率の議論の中で、「外食」を「いすやテーブルなど飲食設備がある場所でのサービスの提供」「客が指定した場所での飲食サービスの提供」と改めて定義した。例えば、ファストフード店の中でハンバーガーを食べた場合は「外食」で税率10%、持ち帰る場合は税率8%が適用されるということだ。

   ここまではいいとして、実際にファストフード店で買う場面を想像すると、疑問が尽きない。持ち帰りのハンバーガーを買った後、「店内で食べよう」と思い直すこともあるだろう。政府答弁では、軽減税率を適用するかどうかは販売時点で事業者が判断し、「客が実際にどこでどう食べたかを追いかけることはない」(佐藤主税局長)。つまり、持ち帰り品を店内で食べても追加で2%分の消費税を追加で徴収されない。当然、客に「悪意」があり、店で食べるつもりでも、「持ち帰り」と言って8%で買うことも考えられる。逆に、店内飲食用に買ったものを後で持ち帰りに変更した場合は「事業者の判断で店内飲食をキャンセルし、軽減税率8%を適用することもあり得る」(麻生財務相)ということになる。野党側は「8%分しか払わずに店内で食べる客ばかりになる」「正直に10%分を払った客とトラブルになる」など、線引きのあいまいさを追及している。

ファストフード店のマニュアルをどうする

   いずれにせよ、店側はかなり複雑な対応を迫られる。アルバイト店員が多いファストフード店側がトラブルなく対応できるのか。こうした点についての対応を、店員マニュアルにどう書くのだろうか。

   このほか、食品とそれ以外をまとめて販売するセット商品は、1万円以下で食品が主体なら軽減税率8%の対象だが、麻生財務相は2月19日の衆院予算委で、ティッシュにおまけのジュースが付いた場合と、ジュースにおまけのティッシュが付いた場合の違いを問われ、「ある程度の量のティッシュボックスに少量のジュースをおまけにする場合は10%。逆にある程度のジュースに少量のティッシュなら8%」と答弁。ただ、どちらが「主」でどちらが「従」かの線引きは、はっきりしないままだ。

   曖昧な事例が続出する議論に業を煮やしたのか、麻生財務相も2月15日の衆院予算委で「混乱はある程度、覚悟しておかないといけない」と本音を漏らし、軽減税率導入による中小企業の事務負担増に関して、経営への影響が「100あったとか、1000あったとかいろいろ出てくる」と述べ、野党から「中小企業の倒産を容認するのか」と厳しく批判される場面もあった。

   軽減税率の導入まで1年余り。政府は消費者や事業者の不安にどこまで答えられるのだろうか。甚だ心もとないというのが、これまでの国会審議を聞いた多くの人の感想のようだ。

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