白い霧がかかったように見える白内障。高齢化とともに患者が増えているが、白内障の手術をした人はしなかった人より長生きするという研究が相次いで発表されている。
白内障の手術は、短時間ですむ簡単なもの。視界のモヤモヤを晴らして、人生の見通しも良くしよう。
点眼薬では進行を遅くする効果しかない
白内障は、老化などが原因で目のレンズの水晶体ににごりが発生する病気で、加齢ともに増えていく。日本人では40代で20%、50代で45%、60代で65%、70代で80%、80代以上はほぼ全員がかかっているという統計がある。薬(点眼薬)では進行を遅くする効果しかなく、治すには手術しか方法がない。手術はにごった水晶体を取り除き、代わりに人工レンズを挿入するもので、日帰りか1泊程度の入院ですむ。
米カリフォルニア大学のビクトリア・テング医師らのチームが、米国眼科学会誌「Ophthalmology」(電子版)の2016年2月4日号に、白内障手術をした人はしない人に比べ、全死亡リスクが約3割減るという研究を発表した。
テング医師らは、米公的医療保険制度「メディケア」の2002~2012年の受給者の中から白内障患者150万1420人を対象に選んだ。そのうち手術を受けた人は54万4984人(36.3%)だった。約4年間にわたり手術をした人としなかった人の全死亡率(病死・事故死・自殺など)を比較すると、次のことがわかった。
(1)手術をした人はしない人に比べ、全体で死亡リスクが0.73%に下がった。
(2)特に下がったのは次の人々だった。80~84歳の高齢者=0.63%、女性=0.69%、重度の白内障患者=0.68%。
高齢者や重度の患者の死亡率が大きく下がったのは、視力の回復で交通事故や転落事故など思わぬ事故にあう危険が減ったと推測されるという。