旧ソ連で開発された「持久力」向上の薬
メルドニウムは1970年代に旧ソ連で開発された。不整脈や糖尿病に有効とされるが、「持久力」を向上させる効果もある。シャラポワ選手は「糖尿病の家系」であるとして長年服用していたというが、スポーツ医学が専門の向井直樹・筑波大学准教授は3月8日のブログで「アスリートが治療のために用いる医薬品ではないので、競技力向上を目的としていたとされても否定できないのではないでしょうか」と推測している。
スポーツドクターの林雅之氏も先述の「グッド!モーニング」で、「あれだけ運動する人で糖尿病はありえない。本当に糖尿病なら、一流のアスリートにはなれない」と指摘した。為末さんはツイッターで「喘息と認定されたら気管支を広げる薬が使えるので、とある大会で3-4割ぐらいの選手が喘息だと申請したことがありました」という事例を挙げ、糖尿病の申し出についても疑問の余地があることを匂わせた。
ただ、ロシアでは、メルドニウムは医薬品として認められており、アスリートからの検出率が高い。3月9日のAFP通信によると、バレーボール、スピードスケート、ショートトラック、フィギュアスケート、自転車といった競技の国際大会で活躍するロシア人選手からも、メルドニウムの陽性反応が出たという。だが、メルドニウムが16年1月から禁止薬物リストに入ることは15年9月の時点でWADAからアナウンスされていた。シャラポワ選手には国際テニス連盟(ITF)などからも複数回警告されていたという報道もある。
ロシアでは15年11月、陸上界がアスリートと検査機関による国ぐるみのドーピング隠ぺいの実態をWADAの委員会に告発され、五輪などの国際大会への出場停止処分を勧告されたばかりだ。為末さんは、「ロシアは薬剤の服用に関してアスリート、ドクター、トレーナーなどの意識が低いのではないか」というツイッターユーザーからの質問に
「はい、意図的であるという点も含め」
と答えている。