話題の匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」を衆院予算委員会で読み上げた民主党議員に対して「一体誰が書いたんだよ、それ」とのヤジを飛ばして批判を受けた自民党の平沢勝栄衆院議員が、テレビの生放送番組に出演して釈明したが、かえって火に油を注ぐ結果となった。
ヤジそのものについては謝罪したものの、「これ、本当に女性が書いた文書ですかね」「言葉が汚い」といった発言が視聴者の新たな反感を買ってしまった。
国会で「一体誰が書いたんだよ、それ」
2016年2月29日の予算委員会で、民主党の山尾志桜里議員がブログの内容を読み上げたところ、議員席から「本人に会ったのか」「出典は?出典!」「うざーい」などのヤジが相次ぎ飛んだ。これにはネットなどで批判が相次いだ。
ヤジを飛ばした1人である平沢氏は3月10日、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)に生出演。「誤解されているから、きちんと真意を説明したい」と切り出し、レギュラーコメンテーター・玉川徹氏のインタビューに応じた。
そこで「ヤジを飛ばしたことは心からお詫び申し上げたいと思います」と謝罪の言葉を口にした一方、山尾氏が事実と異なる話をもとに自民党を攻撃したとして、非難した。
平沢氏の言い分はこうだ。山尾氏はブログ内容を記したフリップを資料として使うことを希望したが、平沢氏曰く、委員会では出所不明のものは使わないとのルールがある。さらに「日本死ね」という表現の教育上の影響も懸念された。そのため、理事会では民主党以外の党が「NO」との結論を下した。
ところが山尾氏は、委員会中で「与党のみなさん」がNGと判断したと訴え、「安倍政権は都合の悪い声は徹底して却下する、無視する」と非難した。
平沢氏は「(理事会では)与党だけじゃなくて民主党を除く野党も『これはおかしい』ってことで止めたわけですが、(山尾氏は)与党だってことで攻撃した」と問題視し、「だから私たちは事実を違うということで、あれしたんです」と、それゆえにヤジを飛ばしたことを明かした。
ただ、確認できている平沢氏のヤジは「一体誰が書いたんだよ、それ」というもの。与党のみを攻撃したことが問題ならば「野党も同意していただろう」「与党だけが却下したわけじゃない」といった直接的なヤジもあり得たはずだが、平沢氏を含む一連のヤジは、なぜか出典に関するものばかりだった。「質問では何を言ってもいい」(平沢氏)にもかかわらず、だ。
スタジオで「本当に女性が書いた?」に高木美保声荒げる
番組では「日本死ね」という表現にも言及した。
国民の間では「日本死ね」という言葉でしか表現できないほど切羽詰まった状況だったと受け止められ、共感を呼んでいる――と玉川氏が指摘すると、平沢氏は、
「例えばいじめの時、『あなた死ね』ということはよくあるんです。この『なんとか死ね』っていうこと(表現)に市民権を与えるのがいいのかということです。こういう表現を使うことはどうかなと、みんな思ってると思いますよ」
と疑問を呈した。さらに番組がブログ主に取材したことを明かすと、「これ本当に女性の方が書いた文書ですかね」とも。これにはコメンテーターの高木美保さんは間髪いれずに「それ関係ないでしょ!女性とか男性とか関係ないですよ!」と声を荒げて食らいついた。
平沢氏は、あくまで保育や待機児童の問題を軽視しているわけではないことを強調していたが、
「文章としても、気持ちは分かりますよ。私はもうちょっと訴え方ってあると思います」「言葉が日本語としては汚い」
と、最後まで「死ね」という言葉そのものにこだわっていた。
「言い訳にしか聞こえない」「論点すり替えてばっかり」
匿名ブログであることが「委員会資料に不適切」とされるのは、ルール上は仕方のないことで、山尾氏の発言に与党側が反論するのは理由がある。
だが、今回、国民の大きな関心を集めたのは「書いた人物が女性であるかどうか」や「言葉が汚いかどうか」より、これが日本中で大きな共感を呼ぶほどの切実な問題だという1点に尽きる。このブログをきっかけに、国会前では「保育園落ちたの私だ」と書かれたプラカードを持った人々によるデモが行われ、2万7000筆以上を集めたネット署名が塩崎恭久・厚生労働相に手渡された。
平沢氏としては誤解を解くために出演したはずだったが、放送後、ネット上には「言い訳にしか聞こえない」「論点すり替えてばっかり」「問題提起のために誰が書いたかとか関係あるの?」といったコメントが相次いだ。
病児保育の認定NPO法人代表・駒崎弘樹氏も10日、自身のブログで「ことここに及んで、なお『本当に女性が書いたのか』等と言っている与党議員がいることに、頭を抱えます」「憤らずにはいられません」とつづっている。
J-CASTニュースは11日、(1)山尾氏の与党批判に対し、なぜ直接的な表現でではなく「誰が書いたのか」というヤジを飛ばしたのか(2)「女性が書いた文章かどうか」は今回の件にどう影響するのか――の2点について平沢氏の国会事務所に質問状を送ったが、18時半までに返答は得られなかった。