現実問題に役に立ってこそ、経済学だろう
筆者は数学出身なので、経済学者があまりに論争好きなので驚いている。自然科学では論争はあるが、将来を予測させてその優劣で決着がつく場合がほとんどである。社会科学では管理された実験をできないという口実で、将来予測で勝負をつけようとしていない。そのため、現実を説明できない奇妙奇天烈な論争が多すぎる。現実問題に役に立ってこそ、経済学だろう。
政治の世界はもっと実務的だ。将来予測のできない学者の意見よりは、よりまともな予測を求めている。今の官邸も、財政再建至上主義の主張より適格に予測できる人を望んでいるだけだろう。
そういえば、東大に「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」がある。財政破綻は当然起こるので、その後を研究しているようだ。ところが、これらの学者の予測に反して、財政破綻の気配は一向にないので、さすがに今は休眠状態だ。
冗談みたいな話だが、予想が当たらない人の書いた経済本が東大生に売れているらしい。その本を読んだ東大生は、予測のできない人の再生産になるのか、予測ができるようになるための反面教師として読んでいるのか、どちらだろうか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、
いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。
著書に「さらば財務省!」(講談社)、「戦後経済史は嘘ばかり」 (PHP新書)、「数字・データ・統計的に正しい日本の針路」(講談社+α新書) など。