新国立競技場建設の設計図に聖火台がないということで、東京オリンピックの関係者は右往左往している。この「珍事」の解決には追加経費がかかるわけで、重なる凡ミスに「五輪などやめてしまえ」の声も...。
まさかこの時期に、こんな間の抜けた話が発覚するとは、だれも予測できなかっただろう。
住宅を作ったら、トイレや風呂がなかった?
東京五輪組織委員会の森喜郎会長が皮肉った。
「親が資金を貯めて家族のために住宅を作ったら、家の中にトイレや風呂がなかったということかね」
2016年3月5日に甲府市で開始された「ラグビー・ワールドカップ2019年日本大会を成功させる山梨の会」での来賓あいさつでのことだ。競技場建設の問題では、ラグビーW杯で試合ができなくなったいきさつがあるだけに、ここぞとばかり、きつい言葉を発した。
「JSC(日本スポーツ振興センター)のおかしな連中が聖火台忘れて設計図を作った」
さらに文科大臣に矛先を向けた。
「一番悪いのは馳浩(文科相)だ」
元首相でもある人物の批判だけに、騒ぎはあっという間に大きくなった。言い訳のコメントが立て続けに流れた。
馳文科相「(森氏は)文科省とは言っていない。私が悪いと言われただけ。愛のムチだと思っている」
JSC「(聖火台設置は)国から要請は受けていない」
森会長の言葉を借りれば「極めて卑劣な言い逃れ」ということになる。
「オリンピックなどやめてしまえ」
東京五輪の開会式を行う競技場に聖火台がないというのは信じられない話である。標準設備であって、オプションではないだろう。
衝撃的なのは森会長の設計図コンペにおける暴露だ。
「(落選した)B案には聖火台があった」
当選した隈研吾氏の設計だと、消防法や観客から聖火台が見えないなどの問題があるという。つまり新たな資金が必要になるというわけである。
税金投入でしのぐのだろう。資金を野球totoに頼りたいところだが、またもや巨人から野球賭博選手が出たことから、この話は完全に消えた。
「なんだかんだといって当初の3000億円を超えるだろう」
こんな予測が出ているのも納得できる。
さらに全国の保育園入園落選に怒るママたちも黙っていない。
「聖火台つくってもいいから保育園つくれよ」
こうなるとスポーツの問題にとどまらない。東京五輪はエンブレム問題に続く設計問題でケチがつき、今回はこの体たらくである。
「オリンピックなどやめてしまえ」
もうこんな声が出ている。ボーンヘッドを金で片づけようとすればするほど非難の声は大きくなるだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)