葬儀の仲介などを手掛ける「みんれび」(東京都新宿区)がネット通販大手「アマゾン」で販売し始めた「僧侶の手配サービスチケット」(以下「お坊さん便」)に、伝統仏教界が反発している。全国の寺院が加盟する公益財団法人「全日本仏教会」がこのほど、サービスの取り扱い中止を求める文書をアマゾンへ送った。
同会が最も問題視したのは、「お坊さん便」が葬儀や法事で信者から僧侶に支払われる「お布施」を定額表示していること。定額表示によって「宗教性」が損なわれる、という理屈だ。
一方、ネットでは「中止を求める前にすることはなかったのか」と冷ややかな声が投げかけられている。
僧侶の登録数も増えている
全日本仏教会がアマゾンに対する「抗議文」を送付したと発表したのは2016年3月4日。布施は宗教行為への「対価」でなく「宗教行為そのもの」で、定額表示された「お布施」は「本来の宗教性を損なっている」と強く訴えた。
13年5月に販売開始された「お坊さん便」は、寺院とつながりの薄い都市部の人を主なターゲットにし、15年12月からアマゾンでも取り扱われ始めた。チケットさえ購入すれば、決められた日時、場所(葬祭場や墓地など)に手配された僧侶がやってきて、お経を唱える。価格は追加料金なしで、3万5000円から。僧侶の移動や戒名の有無で上下するものの、全国一律だ。決済もクレジットカードでできる。
そんな手軽さが、布施の料金に頭を悩ませたくない、寺院と煩わしいコミュニケーションを取りたくない、という層に支持されている。
2016年3月8日に話を聞いた、みんれび広報担当者によると、年間の問い合わせ件数や成約件数も着実に増えている。
「2014年に約8000件だったのが、15年には約1万件に増えました。核家族化、都市部の地域コミュニティの崩壊が進む中、寺院と檀家の関係が薄くなっているのでしょう。価格も、全国の寺院にヒアリング調査してはじきだした『適正価格』だと認識しております」
僧侶の登録数も比例して、増えているようだ。
「アマゾンで『お坊さん便』を販売し始めて、すでに150人ほどからご相談を頂いています。順次登録していますが、15年12月の時点で400人でしたが、現在は450人になりました」
そんな状況をうけてか、ネットでも全日本仏教会への同情は少なく、
「需要があって、供給したい者がいるならば、特に反対する理由はない」
「中止を求める前にすることはなかったのか」
と冷ややかな声が寄せられている。