匿名ブログの「保育園落ちた日本死ね!!!」という書き込みをきっかけにした抗議の動きが、思わぬ方向に発展している。ブログの内容は国会審議でも取り上げられたが、総じて問題を深刻に受け止めようとしない与党側の姿勢に世論が反発し、国会前での抗議行動にまで発展した。
特に安倍晋三首相の「匿名である以上確かめようがない」という答弁をきっかけに、ツイッター上で「#保育園落ちたの私だ」というハッシュタグが登場して抗議の声が広がった。そんな中で、「#保育園落ちたけど政治利用されるのはごめんだ」というハッシュタグも登場。一部野党の議員がこの問題で政権批判を展開していることから、待機児童問題を論じているはずなのに、いつの間にか安保関連法の話題も登場し、「政争の具」にならないかを懸念しているわけだ。
与党席からは「誰が言ったの!」「本人出てこいよ!」
発端となったブログは2016年2月15日に公開され、その中では
「何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」
などと訴えている。このブログの内容を民主党の山尾志桜里衆院議員が2月29日の衆院予算委員会でが取り上げたところ、安倍首相は
「匿名である以上、実際にそれが本当かどうかということを含めて、私は確かめようがない」
と答弁。与党席からは
「やめろ、やめろ!」「誰が言ったの!」「本人出てこいよ!」「出典は?出典!出典はないんだろ?」
といったヤジが飛んだ。安倍首相は
「この『日本死ね』というのは別だが、残念ながら保育所には入れることができなかったということで、大変残念な苦しい思いをしておられる方々がたくさんいらっしゃることは十分に承知している」
などと一応のフォローはしたが、政府・与党が問題に真剣に取り組んでいると受け止めた人は少なかった。ほどなくしてツイッター上には「#保育園落ちたの私だ」というハッシュタグができ、自らの体験をツイートする人が続出。3月5日には、国会前でプラカードを掲げる抗議行動に発展した。共産党の吉良佳子参院議員も活動に参加。プラカードを掲げた写真とともに
「みんなで手をつなぎ声をあげ保育園増設へ。がんばりましょう! 」
と国会前の抗議行動の様子をツイートした。吉良氏は15年12月に長男を出産したが、16年2月には目黒区から認可保育園への入園を断わられたことを明かしている。
同じ3月5日には、新宿西口でも「保活ママを応援します!」と書かれた横断幕を掲げた一団が、同様の抗議活動を行った。ただ、この活動を行ったのは「安保関連法に反対するママの会@東京有志」で、横断幕には「戦争法なんていらない。今すぐ廃止に!」の文言もあった。
「反アベ・脱原発界隈の声がデカすぎて」
この日の抗議活動では、16年夏の参院選に共産党から出馬を予定している弁護士の男性が演説。その様子を写真つきで
「保育を受けるのは子どもの権利。『入れない』のは異常!政府は保育園が足りない現実から逃げ続ける」
としたのに続けて
「一機100億のオスプレイ、1m1億の道路、大企業への数兆の減税...税金の使い道を改め保育園を抜本的に増やすべきです」
とツイートした。共産党はオスプレイの配備や大企業への減税に一貫して反対している。こういった動きが「政治利用」だという批判を呼んでいる形だ。
こうした光景は、テレビなど数多く放送されているほか、安倍政権の批判を続ける日刊ゲンダイは、3月7日に発行された8日付の紙面で、「保育園落ちた」抗議活動の記事を掲載し、
「この怒りがさらに広がれば、参院選で自民党はオンナたちに鉄槌を下されることになるだろう」
と締めくくっている。
一方、こうした動きに対して、ハッシュタグ「#保育園落ちたけど政治利用されるのはごめんだ」では、
「途中から辺野古がどうとか原発がどうとか言い出してげんなりした」
「反アベ・脱原発界隈の声がデカすぎてしがらみ抜きで行動したいママさんが動けない」
などといった声が上がる一方、
「『保育所増やせ!』って市民が声を上げて政治家を動かすんじゃないの。政治の土俵まで持ち上げないと問題は解決しないよね」
などと政治を利用しないと問題は解決しないといった異論も投稿されている。