NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」(以下HRN)の発表した「アダルトビデオ(AV)強制出演」に関する報告書が、さらなる波紋を呼んでいる。発表後、業界内を知り尽くした元人気AV女優や現役女優らが、報告書の「偏り」や調査不足をフェイスブックで指摘したのだ。
HRNは人権団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」(以下PAPS)の協力を得て若い女性がAVに強制出演させられる実態を調査し、報告書にまとめていた。
行為上の「NG事項」は撮影前にちゃんと確認される
報告書が発表されたのは2016年3月3日。そこには、プロダクションとAVメーカーに女性が「搾取」される構図が記されていた。
掲載された10のモデルケースは、出演拒否で法外な違約金を請求された、女優の体を傷つけかねない危険な撮影が行われた、テレビ出演やグラビア撮影といったウソの説明で勧誘された、撮影前に撮影内容を一切知らされなかった、などいずれも悪質だ。
中には撮影のため1日12リットル以上の水を飲まされたり、複数人から避妊具を付けないまま挿入されたり、男性器に見立てた管を通して卵白を膣内に流し込まれたりする事例もあったという。ちなみにPAPSの調べによると、AV出演に関する相談は増加傾向にあり、12年から15年までの4年間で計93件にのぼった。
そうした調査結果やいくつかの判例にもとづき、AV出演を「職業安定法、労働者派遣法上の『有害危険業務』」と独自に判断。最後に、プロダクションやAVメーカーを監督する省庁の設置や不当・違法な勧誘の禁止といった禁止事項を盛り込んだ提言もまとめられている。
しかし、この報告書に「AV関係者」から多くの異議が申し立てられた。最も踏み込んだ批判を展開しているのは、元売れっ子AV女優で現在コラムニストとして活躍する川奈まり子さんだろう。
16年3月5日のフェイスブックで、制作会社とAVメーカー、流通会社を混同しているうえ、撮影現場の実態や制作会社の窮乏ぶりにも全く触れていないと指摘した。
通常の撮影現場では、行為上の「NG事項」が女優に確認される場面も、監督やプロデューサーから撮影内容の事前説明を受ける場面もあると説明した。