競技場に入ってスピードアップ
しかし、北島選手は冷静だった。丸山選手のスパートと脇腹痛の場面をこう振り返る。
「(丸山選手のスパート時期が早すぎるので)消耗すると予測して、前を追う意識を持って、少しずつ詰めようと思った。37キロくらいで脇腹が痛み始めたが、これさえ何とかなればと思った。残りが5キロ、4キロと減ってきて、無理矢理にでも走ってやろうと。痛みより気持ちが勝った」
レース展開は言葉通り。39キロすぎで丸山選手のペースが落ち始めると、追う3人の中からまず石川末広選手(36、Honda)が抜け出し丸山選手に追い付いて抜き去る。このまま石川選手の勝利かと思いきや、そのあと北島選手が驚異の粘りをみせる。時折脇腹を押さえながらもじりじりと差を詰め始めた。そして41キロ付近で石川選手に追いついて抜き去ったのだ。さらに競技場に入るとラストスパート。外国人選手を1人抜き去り、全体の2位まで順位を伸ばしてゴールした。記録は2時間9分16秒(速報値)。日本陸上競技連盟の設定タイム(2時間6分30秒)には届かなかったものの、3つの選考レースを合わせて、福岡国際マラソンで佐々木悟選手が記録した2時間8分56秒に次ぐ日本人2位の記録。3枠ある代表入りも十分狙える。
順位やタイムとともにネットで注目を集めたのは、脇腹を押さえながらも終盤に驚異的な粘りで次々と抜き去っていった姿だ。
「お腹痛い人すげーな なんか抜きそう」
「横っ腹押さえていたのは、ターボボタンだったのか」
「腹痛なのに追いつく」
「脇腹がやる気スイッチ」
「脇腹ブースト」
といった声が乱れ飛んだ。
陸連の尾縣貢専務理事もレース後、「タイム自体は物足りない」としながら「30キロ以降はスピードのぶつかり合いで、素晴らしいデッドヒートだった。このスピードアップには驚いた」とコメント。北島選手を「ベテランらしい素晴らしいレースをした」と評価した。
リオ五輪代表選手は3月17日に発表される。北島選手は「勝負でしっかり勝てたので嬉しい。ガッツポーズも出た。リオに行きたい。選んでほしい」と手応え十分だ。