日本発の「フリーゲージトレイン」開発は難航
こうした複雑な地元の事情を解決する手段するとして導入されたのが、全線フル規格にせず、在来線の線路を活用するFGTであるFGTの導入は長崎新幹線が国内で初めてとなる。現在の博多―長崎の所要時間は特急で最短1時間48分。FGTの長崎新幹線はこれを28分短縮し、最速1時間20分で結ぶ。用地取得不要な既存施設を生かし、新幹線と在来線の乗り換えが不要。佐賀県は費用負担を大きく免れ、佐世保市は在来線活用でFGT迎え入れに希望をつなぐという塩梅だ。
しかし今、最大の問題は肝心のFGTの開発がうまく進んでいないことだ。FGTの開発は国の事業として独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が主体となり、川崎重工業などの民間メーカーが加わる形で進められている。ところが、2014年10月に始めた耐久走行試験で車輪の揺れを抑える部品が破損するなどのトラブルが起き、走行試験は1年以上中断したままだ。
このため、国土交通省は15年末、2022年の全面開業は困難と公表。最近では、全面開業の時期は2025年春以降になるとしている。窮余の策として16年2月、リレー方式での2022年開業が方向付けられた。しかし、乗り換え時間が必要なリレー方式なら、博多―長崎間の時間短縮は現行最速から10分余りにしかならない。FGT開発の工程表も見えないまま、大きなプロジェクトが不安を抱えて進行しようとしている。