血の巡りを悪くさせ、コラーゲンも減らす
なぜ、腰椎間板がボロボロにもろくなるのだろうか。
椎間板は、背骨と背骨の間にありクッションの役割を果たす。椎間板には血管がないので、栄養分は周囲の毛細血管から吸収する。タバコを吸うと一酸化炭素が血管内に溶け込んで赤血球にくっつく。すると赤血球が酸素を運べなくなり、酸素不足になる細胞組織が多くなって、腰椎間板の成長が阻害される。
もう一つはニコチンの毒素の悪影響だ。ニコチンは血管を収縮させる作用があるため、腰椎間板周辺の毛細血管までも収縮させ、栄養分が行き渡らなくなる。また、腰椎間板はコラーゲンで作られる。コラーゲンはビタミンCの働きでできるが、ニコチンはビタミンCの消費を促進する作用があり、コラーゲンを減らしてしまうのだ。
腰椎間板は、バームクーヘンのように輪が重なった形をしており、中に水分を含むゼリー状物質が詰まっている。ニコチンの悪影響で輪の部分に亀裂が入ってゼリーが飛び出し、周辺の神経を刺激して激痛が走るのが腰椎間板ヘルニアだ。こうしてタバコは、腰椎間板ヘルニアを発症させるだけでなく、血流も悪くするので二重に腰痛の原因を作るわけだ。
2016年2月、タバコは首の激痛である「頸椎椎間板ヘルニア(頸椎椎間板変性疾患)」をも引き起こすという研究が、米エモリー大学の医師らによって米国物理療法専門医会で発表された。頸椎椎間板ヘルニアは腰椎間板ヘルニアと症状は似ているが、脳に近い分、痛みはもっと激しいといわれる。これまでもタバコとの関係が疑われていたが、立証した研究はなかった。メカニズムは腰痛とまったく同じだ。
エモリー大学のミッチェル・リービット医師はこう語っている。
「今回の研究は、タバコの有害作用の新しい1ページを開くもので、患者に禁煙を説く医師の援護射撃になります。数々の悪影響が指摘されている中で、これ以上何が必要だというのでしょうか」