「子どもたちや保護者のSOSの声をいちはやくキャッチする」――。そんなコンセプトで導入された厚生労働省の児童相談ダイヤル「189(いちはやく)」で、相談前に通話を切る利用者が続出している。
最長で2分におよぶ「長すぎる音声ガイダンス」が原因とみられ、ネット上では批判が噴出。専門家も「相談までに時間がかかり過ぎている」などと多数の問題点を指摘し、システム改善を求める要望書を厚生労働大臣に出す予定だ。
「お住まいの地域の郵便番号7ケタを押して、最後にシャープを...」
児童虐待などの通報を受け付ける案内ダイヤルの「189」は、厚労省が2015年7月1日から運用をはじめた。以前は10桁の番号で受け付けていたが、「子どもたちや保護者のSOSの声をいちはやくキャッチする」ために3桁に変更。番号には「いちはやく」の語呂合わせが採られた。電話をかけると最寄りの児童相談所(児相)窓口に電話が転送され、専門家が24時間体制で相談などに応じる。
3桁番号を導入したことで入電件数は全国的に増加したというが、一方で児相につながる前の音声ガイダンスの段階で通話を切ってしまう利用者が目立っている。15年12月3日の東京新聞朝刊によると、茨城・群馬・千葉・神奈川の4県と千葉・横浜・横須賀の3市への調査で、利用者の81%がガイダンス中に通話を切っていたという。さらに、沖縄では利用者の9割超が相談前に通話を切っていたと、15年12月12日の琉球新報が伝えている。
――利用者が通話を切る原因とみられるのが、「長すぎる音声ガイダンス」の問題だ。固定電話の場合はプッシュ信号を用い自動で発信地域を特定し、その後、地域内の児相を読み上げ、転送される。さらに、携帯電話の場合は、電話をした人が郵便番号を入力したり、ガイダンスが読み上げる県名や地域を逐一選択する必要があり、児相につながるまで1~2分ほどかかるうえ、通話料金は利用者が負担しなくてはならない。
愛知県刈谷児童相談センターの元センター長で、児童虐待防止のNPO法人「CAPNA」理事長の萬屋育子氏はJ-CASTニュースの取材に、
「児童虐待の通報や相談などの利用率を上げる目的で導入された3桁番号にも関わらず、こうした現状では本来の目的を達成できているとはいえません。110番や119番のように繋がりやすくする必要が当然あるのではないでしょうか」
と答えた。続けて、児童相談センターに長年つとめてきた自身の経験から、「児童相談所には『189』からの通話に対応する専任の職員がいないため、現状の対応で手一杯という部分もあるのかもしれません」と指摘した。