最近、椅子に座る時間が長ければ長いほど寿命が縮まるという恐ろしい研究が相次いでいる。そうでなくても座りっ放しは腰痛に響く。そこで最近、人気が高まっているのがスタンディング・デスク(立ち机)だ。
文字通り立った姿で仕事をする机で、米グーグルやフェイスブックなどのIT大手や国内ベンチャー企業でも導入するところが増えた。個人で机に箱を載せ、その上にパソコンを置いて立ったまま作業をする人も見かける。いったいどれほどの効果があるのだろうか。
生徒の集中力が高まり、テストの成績がアップ
オフィスでのスタンディング・デスクの健康効果に関する研究はまだ見当たらないが、教育現場における数々の効果は2016年1月、米小児科学会誌「ペディアトリクス」で特集された。
それによると、米国では多くの学校で導入が進んでいる。ニュージャージー州の公立小学校の例では、教室内の私語や徘徊が減り、授業への集中度が12%向上した。研究者は「そもそも子どもはエネルギッシュな存在です。机と椅子に縛り付け、動くと叱る方が間違っています。立って自由に体を動かしながら学ぶ方がやる気と集中する時間が続きます」と語っている。
イェール大学の調査によると、児童たちは好きな時に椅子に座ることができるが、立って過ごす時間が長くなり、授業中に消費するエネルギーが225キロカロリー増加した。これは放課後にローラースケートなどで遊ぶ運動量に匹敵する。子どもの運動不足解消に役立っているのだ。
テキサスA&M大学が、立ったまま勉強中の高校生の脳を画像化装置で分析すると、左の前頭前皮質が活発に活動していた。ここは作業記憶と実行機能をつかさどる場所で、集中力が高まっていた。生徒たちに認知能力テストを行なうと、1年間で7~14%スコアが向上した。学力がアップしたのだ。