禁煙の治療薬としてニコチンパッチが市販されているが、実際にどれだけ効果があるのだろうか。禁煙希望者にニコチンパッチを宅配するだけで、あとは何のフォローをしなくても、それなりに禁煙に成功した研究がある。
このユニークな実験をしたのは、カナダのトロント大学のチームで、米医師会誌「AJMA」(電子版)の2016年2月1日号に発表した。
専門医の指導では禁煙成功率は22.2%だが...
ニコチンパッチは、ニコチンを染み込ませたパッチ(シール)を皮膚に貼り、皮膚を通してニコチンを体内に吸収する。パッチの大きさをだんだん小さくして、徐々に血中ニコチン量を減らしていき、ニコチン依存症を治すというもの。1999年に厚生労働省が正式に禁煙補助薬として認可した。
パッチを貼っている期間にタバコを吸うと、血中ニコチン濃度が上昇しすぎて吐き気などを催し、「タバコを見るのも嫌になる」といわれる。しかし、2010年に日本禁煙学会で報告されたある禁煙外来の治療実績報告では、ニコチンパッチだけによる禁煙成功率は、医師の指導の元でも22.2%だった。
トロント大学のチームは、1日10本以上タバコを吸っている人で、ニコチンパッチに興味を示す禁煙希望者を1000人募集。うち500人に5週間分のニコチンパッチを宅配し、行動サポートは一切行わないことにした。比較のために一方の500人にはニコチンパッチを届けず、行動サポートも行なわなかった。
6か月後、それぞれのグループに電話で、30日以上の禁煙に成功したかどうかを尋ねた。すると、宅配ありのグループは38人が「成功した」と答えた(成功率7.6%)。宅配なしのグループの成功者は15人(同3%)だった。本当に成功したかどうかを確認するため、「成功者」に唾液のサンプルを郵送させると、ともに約半数が送ってきたが、全員成功していた。
成功率7.6%を高いとみるか、低いとみるか、意見がわかれるところだが、研究チームでは「医師の指導のもとで行動サポートを行ないながら治療薬を使っても成功率が高いとはいえない。宅配方式は非常に簡単な方法で効果を上げたといえる」とコメントしている。