ただし、電車が破損しないと保険は効かない?
三井住友海上火災と、あいおいニッセイ同和損害保険は、2015年10月にこの「個人賠償責任保険」の契約内容を改定。それにより、たとえば認知症の人が線路内に誤って進入して車両に損傷を与えたり、夜間に徘徊して走行中の自転車と接触して相手にケガを負わせたりして、その家族に損害賠償を請求された場合でも保険金の支払い対象になった。
三井住友海上は、「JR東海の事故の一審判決(750万円の支払い)があったときに、こうした事態に備える保険の需要が高まるとみて、契約内容の改定に踏み切りました」と説明。今回のJR東海の事故がきっかけだったと明かす。
こうした個人賠償責任保険の改定の動きは広がりつつあり、2016年10月には東京海上日動火災保険が、損害保険ジャパン日本興亜は16年度中にも販売に乗り出す。
一方、国土交通省の「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(2014年度版)」によると、2014年度に発生した運転事故は、線路内やホーム上での列車との接触などの人身事故が449件で前年度から28件増えた。また、踏切での事故は246件(42件減)だった。この中には認知症やその疑いのある人が線路に立ち入るなどして列車に接触した事故も含まれているとされる。
こうした事故で鉄道会社が遺族などに損害賠償を求めるケースは、「ケース・バイ・ケース」としながらもある。ただ、保険金の支払いは「たとえば電車が実際に破損するなどの損害がないと発生しません」(損害保険ジャパン)とし、鉄道会社が列車の遅延で損害賠償を求めるケースには適用されないという。