メインスタジアムの建設問題やエンブレムの盗作で悩まされた2020年の東京五輪・パラリンピックは、その招致をめぐる過程でも世界の注目を浴びることになりそうだ。
16年1月に世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が国際陸上連盟(IAAF)の汚職について調査した報告書では、日本が誘致のために国際陸連の主催大会に協賛金を支払っていたと指摘されている。この時点では、国際オリンピック委員会(IOC)が調査に乗り出す方針だと報じられていたが、新たにフランスの司法当局が「招致過程を含む陸上界の汚職」の捜査に乗り出したというのだ。
英ガーディアン紙「多くの古傷を開くことになりそうだ」
WADAの報告書では、国際陸連の汚職はラミーヌ・ディアク前会長が主導していたと指摘。その中に日本に関する記述も含まれていた。IOCのメンバーでもあったディアク氏は2020年五輪・パラリンピックの候補都市に、自らの票と引き換えに国際陸連主催の大会への協賛を持ちかけた。報告書では、イスタンブールが協賛を拒否したのに対して、東京は協賛金500万ドル(約5億8000万円)を支払ったため、ディアク氏はイスタンブールの支持をやめたと指摘している。ただ、報告書からは、協賛金が実際に支払われたかや、「いつ、誰が支払ったか」、仮に支払われていたとして協賛金が招致成功の決め手になったかどうかは分からない。
ディアク氏はドーピング違反をもみ消す見返りにロシアの陸上選手から賄賂を受け取ったとして、15年11月からフランスの司法当局が捜査を進めている。そんな中で英ガーディアン紙は3月1日に、
「フランスの司法当局が、2016年のリオデジャネイロ五輪と2020年の東京五輪の招致過程を含む陸上界の汚職にまで捜査の手を広げたという知らせは、多くの古傷を開くことになりそうだ」
と報じた。記事では、捜査の対象が広がったことで、過去のIOC関連のスキャンダルで名前が取り沙汰された幹部らの疑惑を蒸し返す形になることを指摘している。
AFPはガーディアンの報道を「確認」
AFP通信は、フランスの司法関係筋がガーディアン紙の報道を「確認した」と報じている。捜査は15年12月に始まったという。
協賛金をめぐる疑惑については、遠藤利明五輪担当相が1月15日の記者会見で、
「私は招致活動をやっていたが、あの当時から最もクリーンな活動をしているという評価をいただいていると思っていたので、ちょっとその話は、信じがたい思いがする。私はないだろうと思っている」
などと否定している。