薪を背負い、歩きながら本を読む――。勤労・勤勉の象徴としてお馴染みの「二宮金次郎像」が、時代の流れに合わせて姿を変えている。栃木の小学校に新しく設置されたのは、「座って本を読む金次郎像」だった。
今回、金次郎の座像が登場した背景には「歩きスマホ」の問題があるという。過去には、歩きながら読書する金次郎像に対し「子供が真似したら危険だから撤去すべき」との批判が保護者から寄せられた例もある。
「時流を考えれば、座像の方が『適切』だと考えた」
「座って本を読む金次郎」の像が2016年3月1日に設置されたのは、栃木県日光市・今市(いまいち)地区にある南原小学校だ。今市は金次郎終焉の地として知られ、地区内には民間も含めて20個以上の像がある。だが、金次郎の少年時代をかたどった「座像」が設置されるのは今回が初めて。
南原小学校に金次郎の座像を寄贈した地元団体「報徳道研修 いまいち一円会」はJ-CASTニュースの取材に、
「歩きスマホの危険性などが問題視される中、学校でも生徒に『ながら行動』をしないように指導していると聞きます。こうした時流を考え、本を読みながら歩く金次郎の像よりも、座像の方が適切だと考えました」
と答えた。その上で、「たとえ座っていたとしても、金次郎の勤労・勤勉の精神は生徒に伝わると思います」とも続けた。
また、同会が「金次郎像の姿を子どもが真似したら危険だ」との指摘を直接受けたことはないというが、以前からこうした意見を耳にすることはあったそうだ。確かに、ニュースサイト「毎日.jp」が12年1月25日に配信した記事によると、保護者から「(金次郎像のように)歩いて本を読むのは危険」という意見が滋賀県大津市の教育委員会に寄せられたという。
ただ、金次郎の「座像」が設置されるのは今回が初めてではない。栃木県の「二宮尊徳資料館」によると、児童が像の真似をすると交通安全上問題があるため、戦後に入って「座って本を読む金次郎」や「本ではなく草鞋を手に持った金次郎」など、新しいタイプの像が立てられたという。