東京都は学校の組体操「禁止も制限せず」 「他にも危険な競技はある」は理由になるのか

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   全国の小中学校で多発する「組体操事故」の対応として、一部自治体が組体操の全面禁止を決める中、東京都教育委員会で開かれた審議会は、「全面禁止」も「高さ制限」もしない方針を示した。

   「危険だから中止にすると、他種目も中止にしなければならない」のが主な理由だが、ネットで「なんでそんなにしてまで組体操やりたいんだ」と不満が上がっている。組体操事故に詳しい専門家も「これでは何の方向性も見えてこない」と厳しく指摘する。

  • 「なんでそんなに組体操やりたいの」との声も…(画像はイメージ)
    「なんでそんなに組体操やりたいの」との声も…(画像はイメージ)
  • 「なんでそんなに組体操やりたいの」との声も…(画像はイメージ)

組体操は「心身の調和的発達を図る教育的な効果を有している」

   有識者らでつくる東京都教育委員会の安全対策検討委員会は2016年2月29日、1月22日に続く2回目の審議会を開催。組体操の全面禁止や高さ制限を各校に求めない方針でまとまった一方、都が安全対策法をまとめたガイドラインを3月中に作成することが決まった。

   組体操をめぐっては、全国の小中高で大きな事故が続出。15年10月には大阪府八尾市にある市立中学校の体育祭で発生した組体操事故の様子を映した動画がYouTubeに投稿され、話題となった。

   そうした流れを受け、千葉県流山市、野田市、柏市が全面禁止、大阪市は子どもが何段にも重なる「ピラミッド」「タワー」の禁止を決めるなど、規制の動きが広がっている。

   しかし、審議会の出席者は「危険だからと中止にすれば、棒倒しや騎馬戦、ムカデ競争など他種目も中止となりかねない。安全を第一に考えながら継続すべき」と「中止」に難色を示した。同時に「種目ごとに危険性を示し、各校が安全性を検証して判断するべき」と各校に判断を任せる意向も見せている。

   実際、東京都教育委員会の担当者もJ-CASTニュースの取材に「最終的には区市町村の教育委員会の考えを尊重したい」と語った。

   同委員会は、学校トラブルに詳しい日本女子大の坂田仰教授が委員長を務め、大学教授や区立小中学学校長、PTA協議会員も名を連ねている。初めから組体操を「禁止」する方向性ではなかったらしく、1度目の審議会でも「組体操などの体育的な活動は、心身の調和的発達を図る教育的な効果を有している」(坂田教授)などと実施の意義が説明されていた。

小学校563件の事故のうち3割近くが「骨折」

   一方、日本スポーツ振興センターの統計によると、2014年度に東京都内の小学校で起こった組体操事故の件数は563件。そのうち児童が骨折したケースは158件にも上る。

   そんな中、ネットでは

「普通にやめとけばいいのに」
「なんでそんなにしてまで組体操やりたいんだ」

と審議内容への批判が高まっている。

   専門家も苦言を呈する。組体操問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授(教育発達科学)は一部自治体の「全面禁止」は否定しながらも

「『高さ制限』も『禁止』もしない、というのでは何の方向性も見えてきません。『安全対策を取っている』と主張しながら、有効な対策を何ら講じず、危険な10段ピラミッドをやり続けた現場の教育関係者と同じ言い分です。審議内容が非常に気がかりです」

と取材に話した。

   全面禁止すれば「他種目も中止となりかねない」という委員の言い分も、「ムカデ競争や棒倒し、騎馬戦も危険だと言うなら、組体操と並行でその危険性を分析し、対策すればいいだけの話です。組体操ありきの発言ではないでしょうか」と批判。

   加えて、区市町村の教育委員会の考えを尊重する、といった都の説明に「組体操は現場で巨大化しました。現場に近い行政、教育関係者が歯止めをかけてこなかったからです。そうした経緯を踏まえると、『自治体任せ』にするのでなく、きちっと上からブレーキをかけるべきではないでしょうか」と疑問を呈した。

   最後に、「『全面禁止』か『継続』かという極端な議論に陥るのではなく、どの技がどれくらい危険だからどの程度規制すべき、という組体操のあり方に踏み込んだ議論をしてほしいです」と同委員会へ注文を付けた。

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