2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げに消極的ともとれる発言が安倍政権の主要メンバーから相次いでいる。菅義偉官房長官は2016年2月26日に、過去に消費税を3%から5%に引き上げたケースを引き合いに、「税率を上げて税収が上がらないようなところで、消費税を引き上げるということはありえない」と発言。これまでは引き上げ見送りを検討する条件として「リーマンショックや大震災」を挙げてきたが、これに、年明けからの金融市場の変動に端を発した「世界経済の大幅な収縮」が加わった。
衆院の解散には「大義」が必要だとされる。すでに自民党内からは「唯一大義があるとすれば、『引き上げ再延期の是非』だ」という声もあり、永田町には一連の動きを「解散風」と関連付けて受け止める向きもあるようだ。
「リーマンショックや大震災」が延期の条件だったが......
安倍首相は現時点では税率の引き上げを予定通り実施する考えを繰り返し強調してきた。ただ、16年2月19日の衆院予算委員会では「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生すれば」引き上げ延期を検討する意向を示し、続く24日の衆院財務金融委員会では、世界的な株価の大幅な下落なども念頭にしたのか、「世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているかなど、専門的な見地からの分析」も踏まえると、条件を追加した。
菅義偉官房長官も2月26日午後の定例会見で足並みをそろえた。菅氏は、
「かつて橋本(龍太郎)総理大臣時代に税収(編注:「税率」の言い間違いだとみられる)を引き上げて、まさに結果として税収が下がってきたという経験がある」
と指摘。1997年4月に橋本内閣が消費税率を3%から5%に引き上げた際は、97年度こそ税収は増えたが、その後は景気が後退し、橋本内閣は98年夏の参院選の大敗の責任を取る形で退陣に追い込まれた。そういった経緯から、菅氏は
「リーマンショックや大震災、世界経済の収縮が起これば、税率を上げても税収が減るわけですから、そういう政策を絶対取るべきではないというのは当然のこと」
と述べた。