アメリカ発祥の会員制量販店「コストコ ホールセール」で販売されているボトルウオーターの原材料が「水道水」だった、として話題を呼んでいる。
このボトルウオーターは40本1000円未満という価格の安さで人気を集めており、それゆえ「文句言いたくない」と納得する向きもある。ただ、ほとんどは「衝撃を隠せない」「全然気付かんかった」と驚きの声を上げている。
500mlボトル40本で1000円未満
「水道水」は、コストコのPB(プライベートブランド)として知られる「KIRKLAND(カークランド)」から発売されている。正式な商品名は「purified water(ピュリファイドウオーター)」で、500ミリリットル入り。最も多く含まれる「原材料」の表示に「水(水道水)」とあり、産地はアメリカとある。さらに表示を見ると、これに塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウム(重曹)を加え、ミネラル分を調整している。
硬度は1リットル当たり18ミリグラム。「EVIAN(エビアン)」や「CRYSTAL GEYSER(クリスタルガイザー)」といった輸入飲料水はもちろん「サントリー天然水 南アルプス」や「いろはす」など国産の有名ミネラルウオーターよりも低い。カルシウムやマグネシウムの濃度が低く、クセのない水と言えるだろう。
そして、何よりも際立つのは価格の安さだ。コストコの店舗にある自販機では1本30円で販売されているが、40本入りのパッケージだと1000円未満で購入できるようだ。一般的に1本100円前後で販売される国産のミネラルウオーターと比べれば、その差は歴然だ。やはり価格の安さは魅力的なのか、日本でも愛飲者は多いといわれる。
日本では、各自治体の水道局がPR活動の一環でボトル詰めの水道水を発売する例が多い。東京都の「東京水」や札幌市の「さっぽろの水」、神奈川県座間市の「ざまみず」、大阪市の「ええやん」などすでに数十種類が生まれている。しかし、「東京水」の価格も一般のミネラルウオーター並みで、小売りチェーンの店頭にほとんど並ばないため、一般家庭に普及しているとは言い難い。
「井戸水であろうが、水道水であろうが、何を原水としても構わない」
ピュリファイドウオーターの一件は、じわじわと話題になっていたが、最近になって、原材料表示の写真がツイッターなどで広まると、ネットでは
「びっくりした」
「衝撃を隠せない」
「言われるまで全然気付かんかった」
と購入者から驚きの声が寄せられている。同商品の特質を把握したうえで「文句言いたくない」「安くておいしいのでいつも買ってる」との感想や報告も上がっているが、少数派と言える。
ピュリファイドウオーターはどのような水で、なぜ「水道水」として販売されているのか。日本ミネラルウォーター協会の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「ピュリファイドウオーターはアメリカの飲料水に付けられるカテゴリ名の1つです。基本的に井戸水であろうが、水道水であろうが、何を原水としても構いません。ろ過してミネラル分を取った水であれば、そう名乗れます。製造コストが低いので、非常に安く手に入ります。味の面では『ごくごく普通の水』と言えるでしょう」と話す。
さらに、ピュリファイドウオーターから水に対する日本人とアメリカ人の嗜好性の違いも読み取れるらしい。
「アメリカでは、後から成分を添加した飲料水に価値を見出す傾向があります。その理由は分かりかねますが、コストコの商品が2種類の添加物でミネラル分を補っているのもその表れと言えます。一方、日本とヨーロッパの市場に流通する水のほとんどはナチュラルミネラルウオーターですね。より加工されていない、天然のものを好む傾向があるからだと思います」
日本のスーパーに水道水が並ばないのは、日本人が「安さ」より「自然さ」を水に求めているから、というわけだ。
また、他社のミネラルウオーターとの品質の違いや価格設定について2016年2月29日、コストコにも取材を申し入れたが、同日17時半までに回答は寄せられなかった。