認知症の発症率が人種によって異なることは知られていたが、生活習慣の違いや貧富の差などの影響が考えられるため、はっきり立証できていなかった。
米カリフォルニア大学の研究チームが、同じ地域に住む同一条件の大規模集団で調査した結果、やはり人種ごとに大きな差があることを初めて裏付け、米アルツハイマー協会誌「JAA」(電子版)の2016年2月10日号に発表した。
黒人、アメリカ先住民、ヒスパニック...の順で危険
それによると、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系、アメリカ・アラスカ先住民、太平洋諸島系の6つの人種のうち日本人を含むアジア系の発症率がいちばん低かった。
同大サンフランシスコ校のエリザベス・ローズ・マエダ教授らのチームは、米国最大の医療保険会社「カイザー・パーマネンテ」の会員のうち、北カリフォルニア地域に住む約27万4000人の医療記録をデータに使った。カイザー・パーマネンテは、会員向け総合病院を併せ持つなど充実した保障制度があり、会員は比較的裕福な層がまとまっていることで知られる。
データを分析した結果、6つの人種別に認知症の平均年間発症率(人口1000人当たりの発症例)を比較すると、高い順に次のとおりだった。(1)黒人26.6人(2)アメリカ・アラスカ先住民22.2人(3)ヒスパニック系&太平洋諸島系19.6人(4)白人19.3人(5)アジア系15.2人。
また、65歳の時点で認知症のない人が、その後の25年間のうちに認知症になるリスクを計算すると次のとおりだった。(1)黒人38%(2)アメリカ・アラスカ先住民35%(3)ヒスパニック系32%(4)白人30%(5)アジア系28%(6)太平洋諸島系25%。
マエダ教授は「人種ごとの遺伝や社会行動、生活習慣など、どの因子が影響してこのような結果になったのかはわかりませんが、もし社会行動や生活習慣の因子が関係しているのなら、認知症を減らす有力な方法を突きとめられます」とコメントしている。