食べ物をよく噛(か)むと、胃腸の消化を助け、唾液が出て虫歯予防になるなど多くの健康効果が知られているが、食後のエネルギー消費量を増加させてダイエット効果まであることが、研究結果からわかった。特に食後にガムを噛むとさらに消費量が増えるという。
東京工業大学大学院社会理工学研究所の林直亨教授らが研究をまとめ、欧州の肥満学会誌「オベシティ」(電子版)の2016年2月17日号に発表した。
「早食い」の人より消費カロリー2倍
林教授らは、2014年にブロック状の試験食を使って、よく噛んで食べると食後のエネルギー消費量が増えることを確かめている。そこで今回は、「パスタ、ヨーグルト、オレンジジュース」(合計621キロカロリー)という一般的な食事でも同様の効果があるか検証した。
被験者12人を(1)できるだけ早く食べる(2)できるだけよく噛んで食べる、の2つのグループに分け、食後3時間までのエネルギー消費量を測った。すると、早く食べたグループの平均消費量は15キロカロリーだったのに対し、よく噛んだグループは30キロカロリーだった。
また、食事後15分間ガムを噛むテストと噛まないテストを加えると、ガムを噛む場合は、消費量がさらに平均6~8キロカロリー増えることがわかった。
よく噛むとなぜエネルギー消費量が増えるのか。食事をすると、消化器官が働き栄養素を分解・吸収するが、栄養素が分解される時に「食事誘発熱」と呼ばれる熱ネルギーが発生する。噛めば噛むほど、食べ物は細かくなり、消化活動が活発化して分解が進み、熱エネルギーがどんどん放出される。
噛めば噛むほど食欲も減るから一石二鳥
また、時間をかけて噛むことで脳の「満腹中枢」が刺激され、食欲を抑えるホルモンが分泌される。よく噛むと食べ過ぎ防止にもなるから、二重のダイエット効果が期待できそうだ。
林教授らは「よく噛んで食べることや食後のガムがエネルギー消費量を増加させることを立証できました。噛む行為を基本にする減量方法を開発したい」とコメントしている。