優位だった「省エネ性能」も脅かされつつある
新たな受注は朗報だが、2008年に開発をスタートしたMRJはこの間、部品調達に手間取るなどの「開発遅れ」の問題がつきまとった。成功した初飛行も、当初の予定からは5度の延期、約4年の遅れを経てようやく実現したものだった。
しかも、初飛行成功の余韻も冷めやらぬなかで、15年12月には、初号機のANAホールディングスへの納入時期を従来の2017年4~6月から1年程度遅らせて2018年半ばへ先送りすると発表した。想定外の不具合に対応しながら、「型式証明」と呼ばれる日米当局の認可を得る手続きに臨むためだ。
森本社長は16年2月、業界関係者の不安を払拭する意味もあって、シンガポール・エアショーに先立って日本のメディア各社の取材に応じ、型式証明を得るための飛行試験などを前倒しで行うことなどを主張。これと前後して2月10日にはMRJの試験飛行を2か月半ぶりに再開して開発スケジュールの遅れの挽回をアピールした。
ただ、いみじくも今年のシンガポール・エアショーで、三菱航空機のライバル企業であるエンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)の「2強」が性能強化をアピールしたほか、中国企業もMRJのような小型機での受注機会をうかがった。MRJが優位に立つ省エネ性能などはすでに脅かされており、三菱航空機にとって気の抜けない日々が続くことだけは間違いない。