民主党と維新の党が合流することになった。
現在の議員数は、民主党が131人(衆72人、参59人)、維新の党が26人(衆21人、参5人)。合わせると157人、衆93人。維新の党の参院議員5人は、旧みんなの党の比例代表で当選した人たちで、国会法の規定により、民主党がいったん解党しないと、そのまま合流はできない。
民主出戻り組への違和感
維新の党の衆21人の出身は、民主10人、旧みんなの党8人、その他3人。民主党出身の10人は「出戻り」になる。民主党を一度離れたものの、またくっついただけであり、離れた行動はなんだったのかと率直に思ってしまう。
元民主以外の11人は、新たな人たちだ。旧みんなは、小さな政府、公務員改革、地方分権を標榜していた。それが安全保障での党内対立で、結いの党として出ていった人たちが、維新の党に移った。ここまでは、政策としては同じ方向で集まったといえるが、今回、民主党に合流することとなり、小さな政府、公務員改革、地方分権で、民主と折り合えるかどうかか課題である。
今国会において、国家公務員の給与を引き上げる給与法改正案が提出されたが、この対応は興味深かった。民主党は賛成だが、維新の党も賛成した。維新の党と分かれた、おおさか維新の会は反対した。
維新の党は、もともと公務員給与の引き下げを政策としている。それなのに、おおさか維新の会が抜けた後、国家公務員給与引き上げに賛成したのは、政策がぶれたと言われても仕方ない。
もっとも、将来の話としては、民主党も維新の党も公務員給与を引き下げることで合意している。ただ、目先は引き上げだが、将来は引き下げという、両党間の政策の整合性を保っているつもりだろうが、国民には分かりづらく、二枚舌を使っているようにもみえる。
「おおさか維新の会」の今後に興味津々
企業からの政治献金についても、将来の話として片づけようとしている。維新の党は、もともと企業団体献金の禁止を打ち出している。実は、民主党も同じく、企業団体献金の禁止をいっているが、現実には今も企業団体から政治献金を受けている。これも、今は禁止でないが、将来は禁止ということだ。ここは、維新の党が、すぐに企業団体献金を禁止しようと言い出さないと不味い。結局、民主党のいうように、将来は禁止するが、今は禁止しないことで、維新の党が民主党に飲み込まれてしまっている。
こう見てくると、大きな民主党に、維新の党が飲み込まれていくようだ。
一つ良いことは、それで、おおさか維新は、晴れて「維新」と名乗れるようになることだ。維新の党とおおさか維新の会は、もともと一つが二つに分裂したこともあって、わかりにくかった。
いずれにしても、一つの政界再編が進んだ。今の小選挙区制では、(1)2大政党、(2)政権与党との連合、(3)比例狙いの小政党の3タイプしか、長期的には生き残れないだろう。
維新の党が民主党に吸収されたのは、上の考えから行けば自然である。おおさか維新の会が、夏の参院選(衆院とのダブル選の可能性も含む)で、従来の3タイプの枠に収まるのか、収まらないのか、興味津々である。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、
いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。
著書に「さらば財務省!」(講談社)、「戦後経済史は嘘ばかり」 (PHP新書)、「数字・データ・統計的に正しい日本の針路」(講談社+α新書) など。