「お客に苦情を言われたくなかった」として、20歳の会社員の男が、そのお客の家に火を放ち逮捕されるという事件が起こった。火事になれば苦情どころの騒ぎではなくなる、と思ったのだそうだ。
ネットの一部では「苦情も言えない世の中なのか?」「クレーマーVS放火魔」などと大変な話題になっているが、実態は、お客の要求は至極正当なものであり、決してクレーマーなどではなく、放火した犯人の身勝手な独り相撲だったようだ。
午前2時に灯油をまいて火をつける
香川県警は2016年2月22日、パナソニックの子会社「パナソニックエコソリューションズテクノサービス」の社員の男(20)を現住建造物等放火未遂の疑いで逮捕した、と発表した。放火されたのは、食器洗い機の修理を巡りトラブルになった男性客(64)の自宅で、16年2月18日午前2時頃、この会社員が敷地内の竹垣やエアコン室外機、ベンチに灯油をまいて火を付け燃やした。この家の住民が、たまたまトイレにいて火が上がっているのを発見し、すぐに消し止めたため家屋に火は移らなかった。110番通報し丸亀署が犯人を突き止めた。犯人は放火について、
「苦情に対応しきれなくなったので、男性の家に火をつけて食器洗い機どころではない状態にしようと思った」
と語っているという。この日は上司と一緒に新しい食器洗い機を持って火を付けた家の男性客に謝りに行く予定だったが、その新しい食洗機を用意していなかったという。
こうしたニュースにネットでは、
「すげーな。苦情も言えねえよ、怖くてよお」
「よっぽど理不尽なクレームだったんだろ」
「苦情入れる時は放火される覚悟が必要だな」
などといった書き込みが掲示板に出た。いったい放火に追い込まれるほどのクレームとはどんな中身だったのだろう。
新しい食器洗い機を用意できず、「現実逃避」
丸亀署にJ-CASTニュースが取材すると、意外な答えが返ってきた。
「被害者が言ったのはクレームではありませんし、苦情とは言えないほどの当たり前のことを言っただけです。放火した男は食洗機の修理を巡って嘘やごまかしを繰り返し、自分で自分を追い込みパニックになった、ということです」
と説明した。
放火に至る経緯はこうだ。食洗機は13年10月に購入し15年12月に故障した。その修理を担当したのが被疑者。修理したものの、すぐにまた故障した。この月は3度修理することになった。そして16年2月、またもや故障した。被害者は「短期間に修理の後に3度も故障を繰り返すのはおかしい」などと被疑者の会社に伝えた。そのため、被疑者の上司は被疑者に新しい食洗機を用意することを命じ、2人で被害者に謝りに行くことを決めた。
しかし、被疑者は新しい食洗機を用意しないままその当日を迎えることになり、このままではお客だけでなく上司にも叱られてしまう、とパニックになり、現実から逃避するため放火する事を決めたのだという。丸亀署は非常に悪質な行為であり、放火罪の中では重い現住建造物等放火未遂の疑いで逮捕することにした、と説明している。