勤務態度が悪いとアルバイトの男性(23)を蹴って死亡させた鮮魚卸売会社元社長の女(48)に対し、名古屋地裁が執行猶予付きの判決を言い渡し、ネット上で議論が起きている。
この傷害致死事件は、2015年8月16日の深夜に起こった。
「救命措置を取っており反省もしている」
被告は当時、愛知県大府市内のJA直売所で鮮魚店のテナントを出していた。判決を伝える報道によると、元社長は、直売所近くの駐車場に男性を呼び出し、ワゴン車の後部座席で脇腹などを十数回にわたって蹴るなどし、男性は脾臓破裂で死亡した。
地裁では、裁判員裁判が行われ、弁護側は「犯行後に救命措置を取っており、示談も成立している」などと主張し情状酌量を求めた。一方、検察側は、6時間ほども説教して執拗に暴行したとして懲役6年を求刑した。
これに対し、地裁は16年2月19日、「長時間の暴行は危険だった」としながらも、「救命措置を取っており反省もしている」として、懲役3年、執行猶予5年の判決を選んだ。
このニュースが流れると、ネット上では、執行猶予が付いた判決に不満を感じるとする声が続出した。
「人の命奪ってこの軽さw」「遺族がこれで納得するのかよ」「ある種の男女差別なのかな?」
裁判員裁判では、量刑が厳しくなる傾向にあるとされてきたが、今回は執行猶予が付いたことに驚きの声も上がっている。
事件についての過去の報道を見ると、犯行に至るまでの伏線はあった。
気性が激しく、夜中も呼び出す
被告の元社長は、アルバイトの男性について、日ごろから勤務態度が悪いと注意しており、一部報道によると、元社長の知人は、男性が会社の売上金を横領していたと、元社長から事件の2か月前に相談を受けていたという。
また、元社長は、気性が激しく、男性を夜中も呼び出すなどしていたという。男性の知人によると、元社長から昼夜を問わず執拗に電話が入り、本人も困っていると男性の家族が話していたともされる。男性に暴行を加えるときは、缶コーヒーでも殴っていたとの報道もあった。
事件当日、元社長は、「仕事が終わったのに電話がなかった」と男性に怒って呼び出していた。男性に説教したものの、話を聞く態度が悪いとして、口論になったという。
男性がぐったりした後は、自ら119番通報するとともに、心臓マッサージを行っていた。
事件後、元社長は遺族に謝罪して被害弁償し、示談が成立した。遺族からは被告に寛大な判決を求める嘆願書が名古屋地裁に提出されていたという。