東京電力と中部電力が2015年4月に共同出資で設立した火力発電事業の「JERA(ジェラ)」は、同社の社外アドバイザーを務める米国人弁護士、ヘンドリック・ゴーデンカー氏(57)を2016年4月1日付で会長にする。大手電力が外国人を子会社の会長に起用するのは異例だ。
一方、関東圏で東京電力の最大のライバルとなる東京ガスは、他の大手電力との提携に踏み切るなど、16年4月から始まる電力の全面自由化で、電力・ガス業界は戦国時代の様相を示している。
東電・中部電連合に対抗する東ガス・東北電連合
電力供給をめぐり地域をまたいだ競争が始まるなかで、本来はライバルのはずの東京電力と中部電力がJERAを設立したのは、両社の火力発電向け燃料の調達と海外発電事業を統合し、コストダウンを図るのが目的だ。JERAの液化天然ガス(LNG)調達量は年間約4000万トンと世界最大規模となる。会長となるゴーデンカー氏は「中東や太平洋などでLNGプロジェクトに20年以上かかわった経験を持つ」とされ、人脈を駆使して価格競争や海外戦略で優位に立とうとしている。
JERAは既に静岡ガス(静岡市)にLNGを販売することで基本合意するなど、燃料調達のスケールメリットを生かし、早くも他社との連携を加速させている。
これに対し、東北電力と東京ガスは、関東圏で大口需要家向けに電力を供給する新会社「シナジアパワー」を2015年10月に設立し、2016年4月から販売を開始する。
「東北電力としては東京ガスが持つ関東圏の顧客を取り込む足がかりとなる。東京ガスとしては東北電力の安定した電源を確保することで、ガスの顧客に電力を販売できるメリットがある」(電力業界に詳しいエコノミスト)という。とりわけ東北電力にとっては「北関東には東北の企業も多いため、両社が組むメリットは大きい」という。
東京ガスはさらに、関西電力とLNGを共同で調達する検討を進めていると報道されるなど、関東圏でのライバルである東京電力と中部電力が連合する動きに対抗の構えを一層活発化しそうだ。