飲酒を禁じても直ちに法律違反ではない?
この契約書について、引越社関東の不当労働行為と闘っている労働組合、プレカリアートユニオンは「(社員などから)直接こちらに相談が寄せられたことはありません」という。そのうえで、「はっきりしたことはわかりませんが、この規則に違反して懲戒解雇されたケースがあったと聞いています」と話した。
ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士は、2016年2月17日付のYAHOO!ニュース「【アリさんマークの引越社】アルバイトに『2人以上で飲酒したら懲戒解雇』という誓約書にサインさせる」の記事で、こう指摘している。
「そもそも、労働者に対して飲酒を禁止することができるのか?という問題があります。 まず、いくら使用者だからといって、労働者の私生活に立ち入ってその生活を制限するようなことは許されません。これが原則です」
さらに、「もちろん、こんな理由で懲戒解雇できません。ほぼ100%に近い確率で、これを理由とした懲戒解雇は無効になるでしょう」と、言い切っている。
一方、東京労働局総合労働相談コーナーは、「雇用契約書に『飲酒を禁止する』ことが書かれていたとしても、それが直ちに法律違反とは言いきれません」という。「運送業であれば、飲酒は重要な労務条件になりますから、たとえ社員同士でも翌日の業務に差し支えるような飲酒は避けてもらいたいと考えるのは、むしろよくあることです」と説明。まずは会社に真意を確かめる必要がある、と話す。
ただ、「労働法規のうえでは違法とは言いきれませんが、『個人の生活に会社がどこまで踏み込んでいいのか』という、別の問題はあります」とも。「(会社側は)勝手に個人の生活を制限したとして、人権蹂躙と訴えられないとも限りません」と話し、その決着は「裁判に委ねられるとしか言えません」。