信用金庫には「もう一つの日銀」がある
マイナス金利の導入で、銀行では預金金利の引き下げが相次ぐなか、なぜ信用金庫でこうした「逆バリ」が可能なのか――。
預金の高金利は、金融危機が起こった1990年代後半~2000年代前半には預金が集まらず(資金調達できず)に困っている、「危ない」金融機関などといわれたが、最近は「もう、そんなイメージはなくなりました」(熊本第一信金)という。
もともと信用金庫の資金調達は市場の割合が少なく、預金に支えられている。営業地域も狭く、決まっていることもあって、銀行のように「集まりすぎ」の心配も少ない。熊本第一信金は「運用に問題ありません」と話す。
また、預金金利は現状、限りなくゼロに近い。仮に預金金利を引き上げて年0.1%にしたとしても、100万円を1年預け入れても利息は1000円にしかならないのだから、話題性や預金の歩留まりを考えれば、プラスと判断してもおかしくない。
さらに、個々の信金の背後には「信金中央金庫」の存在がある。信金中金は信金の上部組織で、全国の信金から預金を受け入れている。つまり、個々の信金は日銀への預金のほかに、信金中金という「もう一つ」の運用ツールをもっていることになる。マイナス金利を導入していない信金中金に預け入れておけば利回りを確保できるため、日銀への預金で生じるマイナス金利分を補うことができるというわけだ。
西武信金は預金の運用について、「株式や債券、融資を伸ばすことも運用です」としたうえで、「(信金中金は)預入先の一つではあります」と話す。
預金を受け入れる信金中金は、全国の信金から一律の金利で受け入れているが、「(預金金利については)公表していません」という。
1月末の残高は134兆8518億円。前月比は0.6%減だったが、前年同月比では2.3%増えた。「残高は増えています。ただ、まだ(マイナス金利の導入が)はじまったばかりなので、今後どうなるのか、注視していきたい」と話している。
なにしろ信用金庫は全国に250もある(2016年2月15日現在)。地元をさがせば、預金金利を引き上げている信金はまだあるかもしれないし、預金するなら、「地元の信用金庫がオトク」ということになるかもしれない。