パナソニックは2016年2月18日、社員の「同性婚」を事実上、異性同士の結婚と同等に認める方針を明かした。就業規則にある「配偶者」の定義を見直し、同性カップルも特別休暇や祝い金の支給といった福利厚生の対象とすることを検討している。
「同性婚」をめぐっては、15年11月に東京都渋谷区と世田谷区が、同性カップルを結婚に準じる関係と認める「パートナーシップ証明書」の交付を始めて大きな話題を集めたばかり。性的少数者(LGBT)への理解が「イメージアップ」にとどまっている企業も多い中で、就業規則の変更にまで踏み込んだパナソニックの動きはどこまで広がるのか。
対象者の数は「把握しておりません」
「15年夏に社員から『同性との結婚を考えている』という申し出があったことで、社内で同性パートナーを婚姻関係と認める動きが高まりました」
「同性婚容認」のきっかけについて、パナソニック広報部は18日のJ-CASTニュースの取材にこう明かした。また、同社は国際オリンピック委員会の最高位スポンサーであり、五輪憲章が掲げる「性別や性的嗜好による差別を禁止する」に配慮する意味もあるという。
現時点で社内にどれほどの対象者がいるかについては「把握しておりません」としたが、社員向けの勉強会を開催するなど理解を促す取り組みを進めていくという。同性婚の「認定方法」については検討中だというが、「渋谷区のパートナーシップ証明書のように、何らかの形で『婚姻関係と同等の関係にある』と証明できる書類の提出を要求する予定」としている。
こうした動きは、ほかの国内企業でも見られる。日本IBMは16年1月1日、同性パートナーがいると申告した社員に結婚祝い金などを支給する制度を新設。アパレル企業のレナウンも、自治体の証明書を提出した同性カップルを「既婚者と同等の取り扱い」とすることを15年11月に決定している。
ほかにも、性同一性障害の社員を対象に「人事上の取り扱いを本人希望の属性に変更」できるという日本軽金属ホールディングスや、社員採用のエントリーフォームから「性別欄」を削除したラッシュジャパンなど、LGBTの存在を認め多様性を尊重する姿勢を表明する国内企業が増えつつあるのも事実だ。
LGBTの割合は「左利きやAB型とほとんど変わらない」
電通が15年4月に行った調査によると、性的少数者(LGBT)は日本の人口の約7.6%、およそ13人に1人の割合で存在するという。これは、左利きやAB型の割合とほとんど変わらない数字だ。
だが、LGBTへの理解が進んでいる国内企業が多数派とはいえない。東洋経済新報社が発行する「CSR企業総覧2015年版」によると、国内主要企業750社のうち、LGBTの権利尊重や差別禁止の基本方針が「ある」と答えたのは146社(19.5%)。また、何らかの取り組みを行っていると答えたのは98社(13.1%)だった。
LGBTの就労支援プロジェクトを行っている大阪市の企業「笑美面(えみめん)」はJ-CASTニュースの取材に、「企業のLGBTへの取り組みが『イメージアップ戦略』にとどまり、『理解』にまで達していないケースが目立つ」と指摘する。
「LGBTへの『支援』を表明している企業は多いですが、それが実際に働く上での『理解』にまで達しているケースはほとんどないのが現状です。なかには、自社のイメージアップ戦略に近い目的で『LGBT支援』を利用する企業も少なくはありません」
それだけに、日本を代表する大企業であるパナソニックによる「同性婚容認」については、「大企業が就業規則の変更まで検討するのは極めて珍しい」として、「同様の動きが進んでいくことを期待します」としている。