覚醒剤取締法違反(所持)容疑で逮捕された元プロ野球スター選手、清原和博容疑者。逮捕当時の年齢は48歳だ。実は、覚醒剤の広がりは若者よりも40代以上が深刻化している。
会社員や公務員でも、一定の地位を築いている人に覚醒剤の「魔の手」が及んでいるようだ。
「高値」の覚醒剤が買え、社会的地位があり秘密守る
覚醒剤取締法違反で検挙される年代は、かつては20代が最も多かった。ところが今日では40代が最多だ。警察庁のまとめによると、2014年には「40代以上」が全体の6割近くを占めた。
清原容疑者以外にも、有罪判決を受けた歌手のASKAが56歳。また2001年に逮捕された元タレントの田代まさしさんは、当時45歳だった。田代さんの場合、以後も数回逮捕され、服役もしている。
暴力団関係者や密売人ではない一般人でも、この年代は少なくない。最近報じられた、覚醒剤所持や使用での容疑者逮捕のニュースをざっと探しただけでも、大阪市で無職44歳男性(1月28日)、兵庫県三田市で新聞専売所の元所長39歳男性(2月3日)、広島県呉市で52歳男性(本人は容疑を否認・2月12日)、神奈川県横浜市で町議会議員41歳男性(本人は容疑を否認・2月16日)と、40歳前後の事例が見つかった。
2016年2月11日放送の「時論公論」(NHK)は、中高年の覚醒剤使用が増えている点について、「密売する側と、使用する中高年側、双方の事情がかみ合ってしまっている」という専門家の指摘を紹介した。
密売側にとっては、覚醒剤は大麻や危険ドラッグに比べて高値なので、若者よりお金を持っている中高年を狙う。しかも社会的地位や家庭があるので、秘密を守れる点でも、格好のターゲットになる。番組によると、2015年に逮捕されたなかには、40代の市議会議員や新聞社幹部、50代の消防士がいたという。
自分の人生が台無しになるにもかかわらず、覚醒剤に手を出す理由――それはこの年代特有の、仕事や人間関係の悩みが大きいようだ。