「保育園落ちた日本死ね!!!」――こんなストレートな怒りをタイトルにした匿名ブログが大きな話題を集めている。保育所の入所選考に落ちてしまった子供の親が、政府に対して「ふざけんな」「いい加減にしろ」と恨み言を連ね、保育所の増設を訴える内容だ。
同じ不満を抱える人が多かったためか、その主張は大きな反響を呼び、東京都の区議会議員や保育所経営者にも届き、論議も起きている。
「不倫も賄賂もいいから保育所増やせ」
ブログは2016年2月15日、「はてな匿名ダイアリー」に投稿された。具体的な地名や保育所の種類、投稿者の性別は伏せられているが、14日に子供が入所選考に落ちた、と打ち明け、「何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」「子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに」とストレートに不満をぶちまける。
そして、親の希望通り保育所に子供を預けられないなら「子供産むやつなんかいねーよ」と吐き捨てつつ、東京五輪なども引きあいに、とにかく財源を作って「保育所増やせ」と政府に迫っている。「不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園ふやせよ」と、最近の安倍内閣の閣僚や自民党所属議員の不祥事にも触れている。
このブロガーが主張している保育所は公費で運営される「認可保育所」だと考えられる。
ブログは反響を呼び、17日17時までにフェイスブックで3万回以上シェア、はてなブックマークもおよそ1800ついた。ツイッターでも
「ホントこれだよ」
「正論すぎる」
と共感を集めている。その後、東京都北区議の音喜多駿氏や都内でおよそ10か所の保育所を経営する社会起業家、駒崎弘樹氏も反応し、ブログで感想を述べた。こうして、匿名ブロガーの主張が「どうすれば待機児童を解消できるか」という大きな議論を巻き起こした。
しかしながら、2人とも投稿主が訴える保育所の増設には否定的だ。音喜多氏は16日のブログで、もし増やせば「潜在的利用者が顕在化するイタチごっこ」に直面すると指摘。東京は使える土地も少なく、地価も高いため、新設コストが高すぎると訴えた。
一方の駒崎氏も17日のブログで、保育士不足や自治体の許認可制度、物件不足といった「障壁」から都市部での新設は困難、と分析する。
待機児童対策に、政策が追いついていない
保育所入所問題の根本的な解決策はあるのか。
現行予算の枠内で考える音喜多氏は、保育料にもベビーシッター代にも使えるバウチャー(クーポン券)を子育て世帯に一律で給付するべき、と提案する。
対する駒崎氏は保育や子育てにあてる予算自体を増額すべき、と主張し、読者に「怒りましょう」「行動しましょう」「自治体に文句を言うべき」と呼びかけた。
「待機児童問題」について、政府もただ手をこまねいていただけではない。13年4月には、14年度末までに保育所の定員を20万人分、その後3年間でさらに20万人分増やし17年度末までに待機児童ゼロを目指す「待機児童解消加速化プラン」を発表。
15年9月に厚生労働省が公表した資料によると、実際、13年、14年の2年間で目標値を超えるおよそ21万人の受け皿が新たに確保された。しかし、これを受けて15年は保育所申込者数が前年度より大幅に増加、5年ぶりに待機児童数が増えてしまった。膨らみ続ける待機児童に、政策が追いついていない様子が伝わってくる。
子供を保育所に通わせる都内在住の30代女性はJ-CASTニュースの取材にこう現状を説明する。
「認可保育所はどこも一杯なので、仕事を辞めざるをえない親も多いです。入所の選考は住所や世帯年収、子供の生年月日など様々な要素を数値化した『ポイント』で決まるらしく、それを見越して子作りの時期まで調整しようとする友達もいました。こんな厳しい状況を考えれば、若い世代が子供を作るのに二の足を踏むのも仕方ないでしょうね」