心地のよい音楽を聞きながらウォーキングやランニングをすると、リラックスすることが知られているが、運動後の自律神経の働きにもよい効果をもたらすことが改めて科学的に実証された。
東北大学大学院医学系の小川佳子助教、上月正博教授らのチームが研究をまとめ、米科学誌「プロスワン」(電子版)の2016年2月3日号に発表した。
運動中は交感神経が興奮して心臓の鼓動を上げ、血圧上昇
研究は、心臓病患者のリハビリの際、心臓に負担のかからない運動療法を行なうには、音楽をどうか使えばよいかを調べるために行なわれた。
自律神経には交感神経と副交感神経がある。交感神経は体が活発に動く時に働き、副交感神経は逆に睡眠中など体を落ち着かせる時に働く。運動中は交感神経が興奮して心臓の鼓動を上げ、血圧を上昇させる。その間、副交感神経は活動が低下したままだ。運動後は副交感神経が活動を始め、心臓の鼓動を鎮めて血圧を下げる。副交感神経が素早く回復しないと、心臓にストレスがかかりっぱなしになり、不整脈が発生し心臓突然死が起こる場合がある。
マラソン大会での急死は副交感神経の乱れから
健康な人でも運動を行う際は、副交感神経の回復力がカギになる。ランナーがマラソン大会で急死するケースも、副交感神経の乱れが原因の場合が多い。
そこで、研究チームは健康な若者を対象に、気分を落ち着かせる音楽を聞きながら自転車漕ぎをしてもらった。そして、運動の強度を変えながら音楽を聞いた場合と聞かなかった場合とで、心拍数分析装置を使って副交感神経の働きを調べた。すると、音楽は自律神経を調整する効果があることがわかった。特に、気分を落ち着かせる音楽は、運動後の副交感神経の活動を高めることがわかったという。好きな音楽を聞きながら運動しよう。