コンビニ業界3位のファミリーマートと、同4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(GHD)の2016年9月統合後の新体制が決まった。
持ち株会社「ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)」を発足させ、その下にファミマとサークルKサンクスを統合したコンビニと、ユニー本体のスーパーの2つの事業会社をぶら下げる。HD社長にはファミマの上田準二会長(69)が就くことになり、ファミマ主導体制が再確認されたが、サプライズ人事もあった。
「ユニクロ」元副社長をコンビニ事業社長に
下馬評では、ファミマの中山勇社長(58)がコンビニ事業会社社長、ユニーGHDの佐古則男社長(58)がスーパーの事業会社社長に、それぞれHD副社長兼務で就くと見られていた。しかし、コンビニ事業会社の社長には、ユニクロを展開するファーストリテイリングの元副社長、澤田貴司氏(58)を招へいし、中山氏は同事業会社会長とHD副社長、佐古氏もHD副社長兼務ということになった。
この人事体制を発表した16年2月4日の記者会見で、上田氏は「新会社の道筋をつけるまでは今回の体制で進めていく」と述べた。上田氏は2015年3月にファミマを退くつもりだったという秘話を披露した上で、HD社長就任は「(ユニーとの)統合が実現したため、最後まで責任をとらなければと決断した」と説明した。
もちろん、上田氏が2016年12月に古希を迎えることを考えても、長く社長を務めるとは思われない。後継が中山氏になるのは既定路線だが、中山氏がコンビニ事業会社社長のままHD社長も務めることになるのは、流石に荷が重い。上田氏が「HDの一体経営についても、私を補佐しながら、中山氏にきっちりとやってもらわないといけない」と語ったように、不振のスーパー事業再建に向け、旧ユニーへのグリップを利かせるためにも、最初から中山氏がHD全体ににらみを利かせる体制が望ましいと判断したようだ。
コンビニ会長・社長は伊藤忠の同期
そこでコンビニ事業を仕切る人材として白羽の矢が立った澤田氏とは、どんな人物なのか。上智大理工学部を卒業して伊藤忠商事入社。その後、ファストリに移って副社長まで務めて退社し、企業再生支援ビジネスに身を投じ、直近では2005年に設立した企業経営支援コンサルティング「リヴァンプ」の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めている。
商社といえば何十億、何百億円の商売が当たり前だが、澤田氏はほとんど書類上だけでモノを動かして口銭を稼ぐことに飽き足らず、伊藤忠在籍中も、イトーヨーカ堂グループが買収した米セブン-イレブンの再建に携わった。
その後、商社を辞め、「現場」を求めてファストリに転じ、まだ無名に近い地方の衣料チェーンにすぎなかった同社で「フリースブーム」を仕掛けるなど、成長の基礎固めに尽力。2002年に創業者の柳井正氏から後継社長就任を要請されたが、固辞して同社を去った。その後、ハンバーガーチェーンのロッテリアやバーガーキング、ドーナツ チェーンのクリスピー・クリーム・ドーナツ、アイスクリームのコールド・ストーン・クリーマリー・ジャパンなど飲食関連事業の立ち上げや経営再建に携わってきた。
上田氏は会見で、「中山氏と澤田氏は伊藤忠時代から同期で、その後も交流があった。澤田氏は小売業に造詣が深い」と、ヘッドハンティングの理由を説明した。
ライバル・ローソン社長とも深い因縁
澤田氏には、コンビニ業界に、もう一つの「因縁」がある。ローソンの玉塚元一社長(53)との関係だ。ファストリで一緒に働き、澤田氏が社長就任を断って退社した後、玉塚氏がファストリ社長に就任した。その玉塚氏も柳井氏との確執が取りざたされるなかで退いた後、澤田氏と玉塚氏が「リヴァンプ」を共同で設立し、企業再生などに力を合わせて取り組んだ――という深い関係なのだ。玉塚氏は一足先に2010年にローソンに転じ2014年に社長に就任、澤田氏が今回、ファミマ社長に就き、同業で相まみえることになった。
両氏の対決に興味は尽きないが、業界を見渡せば、トップを独走してきたセブン-イレブンといかに戦うかという点こそ最大のテーマになる。
ファミマは今回の統合で店舗数は約1万8000店とセブンに匹敵する。ただ、1店の日販はセブンの67万円に対し、ファミマは52万~53万円と、大差をつけられている。ファミマは現在、「600Kプロジェクト」を進め、当面、日販60万円を目指し、「中食構造改革や物流構造改革を進めている」(中山氏)。澤田氏は当面、これを継続することになるが、目標のハードルは低くないし、それを達成しても、かつて関係のあったセブンとの差はなお大きい。
「まずは現場をまわって加盟店オーナー様などからご指導をいただき、徹底的に勉強してきたい」。澤田氏は2月4日の就任発表会見で謙虚に語ったが、どのようなリーダーシップを発揮していくのか、注目される。