2015年9月のダイエット開始から5か月目の木村清志さん(仮名、以下キヨシさん)にとって、公約した「10キロ減」の期限まで残り1か月強となった。なかなか運動の習慣が身につかないが、ゴールが迫ってきて少々焦ってきたようだ。
妻・美香子さん(仮名)のサポートを受けて、初めてスロートレーニングに挑戦した。簡単な体の動きに最初は余裕の構えだったが、次第に泣き顔に変わっていった......。
「空気いす」で静止したら体中プルプル
キヨシさん「妻がスロートレーニングの本を持っていたんですよ」
運動不足解消のため、夫婦でスロートレーニング挑戦を決めたキヨシさんに、美香子夫人がいきなりのナイスアシストだ。本にはDVDが付いており、一緒に見ながらスタートした。
「イージー」「ノーマル」「ハード」の3コースが用意されているが、初心者なのでもちろん「イージー」を選択。最初は立位のまま、左ひざと右ひじをつけるために手足を大きく動かす運動だ。「いち、に、さん」でゆっくり足を上げると同時に、ややかがむ姿勢をとりながら、ひざとひじを極力近づける。
編集部「どうでしたか」
キヨシさん「楽勝でした。スロートレーニング、余裕じゃんって(笑)」
ところが次の動きで、笑顔は完全に消えた。いわゆる「空気いす」をつくるスクワットだ。これも立位から「いち、に、さん」とゆっくりカウントしながら、ひざとお尻が水平になる位置までかがむ。3段階に分けて少しずつ、間を開けながらの動きは体に負荷がかかり、「空気いす」状態で数秒間静止するときには「キツさ」が最高潮に達する。
キヨシさん「最初は足がプルプルして、繰り返すうちに体中プルプルになりました」
だが、厳しいレッスンは終わらない。次は床にお尻をつけて座り、上体は起こしたまま両足を軽く曲げた状態で少しだけ浮かせる。次に片足をゆっくり曲げてひざを体に引き寄せながら、上半身も前に傾ける。これも3段階でゆっくりと動かし、3段階で元の態勢に戻す。
キヨシさん「もうダメ、と思った時にDVDから『どうしても耐えられなければやめてもいいです』というナレーションが流れてきて、速攻ギブアップしました。本当は10回1セットなんですが、8回でいっぱいいっぱいです」
編集部「一緒にやっていた奥さんの反応は」
キヨシさん「......舌打ちしていました」
室内で1日10分程度、終わった後は達成感
がっかりされるのも仕方がない。美香子夫人は既に「ハード」編に進んでいたのだ。一方のキヨシさんは、「イージー」編の最初の段階で音を上げてしまった。
キヨシさん「ゆっくり体を動かすだけでこんなにシンドいとは、正直思いませんでした。動作を途中で止めるのが、なによりつらいんです」
ところが、キツイのが快感だったのか、すっかりスロートレーニングが気に入ったようだ。まず、1日10分程度の短時間、しかも寒い外に出る必要がないので、帰宅後の夜間にできるのが大きい。ゆっくり動くので、けがの心配がない。終わった後は体がポカポカ温まるので、「運動した」という達成感が得られる。自分に合った体の鍛錬法を見つけたと、ウキウキの表情だ。
半面、以前はスポーツマンだったキヨシさんは、実際に体験してみて自らの体力の衰えにがく然としたようだ。
キヨシさん「特に足が本当にダメになっていると感じました」
それでも継続して運動する環境が整い、モチベーションも高まった。あとは毎日続ければ、自身のダイエットだけでなく家族全員の健康増進にもつながり、いいことずくめだ。
夫婦でスロートレーニングを始めてから数日後、2人の息子も仲間入りしたそうだ。キヨシさんが帰宅前に体を動かしているという。
編集部「奥様がハード編、キヨシさんはイージー編、お子さんもイージー編ですかね」
キヨシさん「それが、妻に聞いたら『イージー編は楽々クリアして、今はノーマル編にトライしてるわよ』って言われました(肩を落とす)」
編集部「......続ければ、きっと追いつけますよ」