健康のため「糖質制限」を勧める本が相次ぎ出版され、「糖質ゼロ」や「糖質オフ」をうたったビール類やワイン、即席ラーメンなどが次々と登場している。
これまでの「カロリー制限」とは異なり、生活習慣病の予防には糖質(炭水化物)を積極的にコントロールすべきだとする「糖質制限」がここ数年注目されており、日本はちょっとした糖質をめぐる新商品開発ブームとなっている。
カップ麺、だしつゆ、チューハイ、ワインにも
サッポロビールは「ボンヌサンテ糖質ゼロ」を、2016年3月29日に全国で発売する。日本初の「糖質ゼロ」の国産ワインで、「フルーティーな香りと、どんな料理にも合うすっきり軽やかな飲み口が特長」という。サッポロは「ビールテイストや日本酒など糖質ゼロ商品は一定規模に成長しており、ワインも今後期待できるカテゴリーだ」と力を込める。
キッコーマン食品は、2016年2月8日から、塩分と糖質を30%カットした「キッコーマン だししっかり 減塩つゆ」を全国で発売した。同日発売の濃縮つゆ「濃いだし 本つゆ」に比べ、塩分と糖質を30%カットしているという。「減塩でありながら、味のもの足りなさを感じることなく使うことができる」という。
「糖質ゼロ」や「糖質制限」をうたった新商品は、2015年も数多く登場した。
明星食品は一般的なカップ麺と比べて糖質を半分に抑えた「明星 低糖質麺」シリーズを充実させ、どんぶり型ノンフライカップ麺「明星 低糖質麺 はじめ屋」シリーズと、新ブランドのタテ型ノンフライカップ麺「明星 低糖質麺 ローカーボNoodles」を、2015年11月2日に発売した。いずれも「ラーメンは食べたいけど糖質が気になる」という健康指向派に向けた意欲作だ。
宝酒造は6月16日、「TaKaRa果汁入り糖質ゼロチューハイ『ゼロ仕立て』」を発売。カルピスは3月16日、「カルピス カロリー60%オフ」を発売している。
「糖質」めぐり相反する「説」の本も話題に
「糖質ゼロ」をうたった商品開発は、健康指向の高まりとともに、まずビール大手各社で進んだ。糖質やプリン体に配慮した「機能系ビール類」の開発で先行したのは、サッポロビールが2013年6月に発売した「極ZERO」だ。「極ZERO」のヒットで、他の大手3社も「糖質ゼロ」や「プリン体ゼロ」のビール類を次々と発売し、「糖質制限ブーム」に火をつけた。
糖質制限とは「脂質やタンパク質はしっかり摂取して、血糖値を上昇させる糖質だけは極力減らす食事療法」で、京都市の内科医・江部康二氏(一般社団法人「日本糖質制限医療普及推進協会」代表理事)が第一人者とされる。江部氏は糖質制限を「簡単に言えば、主食を食べない代わりに肉・魚・野菜などのおかずばかりを食べるというイメージだ」と説明。「これまで常識とされてきた『炭水化物(糖質)中心の食事』は、医学・生理学・栄養学的根拠が乏しく、むしろ多くの疾患の要因となっている可能性がある」という。
糖質制限をめぐる本も数多く出版されている。2015年11月には「糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて」(山田悟著、幻冬舎新書)、「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」(宗田哲男著、光文社新書)が相次いで出版され、いずれも書店によってはベストセラーに名を連ねている。
一方で、「世にも恐ろしい『糖質制限食ダイエット』」(幕内秀夫著、講談社+α新書)など、糖質制限には批判もある。幕内氏は「メタボの中高年男性、糖尿病患者が短期的に行う上では体重減少効果が期待できるが、必須栄養素が不足する危険が高い方法で、決して長期にわたって実行してはならない」と警鐘を鳴らす。とくに「女性が行えば、極端に痩せ、生理が止まり、不妊になり、各種婦人病になる危険性が高まるリスクがある」と指摘している。