俳優の渡辺謙さん(56)が胃がんを患い、内視鏡手術を受けていたことを所属事務所が2016年2月9日発表した。妻で女優の南果歩さんが強く勧めた人間ドックで早期のがんが見つかり、術後の経過は良好だという。
この人間ドックを紹介したのは長女で女優の杏さん。渡辺さんは1989年に白血病を発症、その後再発しながら克服している。本人もそうだが、家族が日頃から健康に人一倍気をつけて素早く検診を受けたのがよかった。
宮迫博之さん「ほんま思いつきで命拾いしたわ」
渡辺さんは自身のツイッターをこうつぶやいた。
「いやぁ驚きました。妻が行ってと勧めた人間ドックでがんを発見。かなり早期なので早々に手術しました。この段階での発見は奇跡、点検は大事ですわ。妻、そして人間ドックを紹介してくれた娘にも感謝です」
胃がんは、肺がんに次いで日本人に多いがんだ。最近は「早期発見をすればほぼ完治する」といわれている。2016年1月に国立がん研究センターが発表した胃がんの5年後生存率は73.1%。初期のステージ1では97.8%で、ほとんどが助かる。しかし、ステージ2、3、4に進むにつれ、74.0%、51.7%、8.0%と急激に下がっていく。
早期発見がいかに大事かわかるが、専門医のサイトを見ると、「自覚症状がほとんどなく、偶然の検診で見つかるケースがほとんど」だ。初期は症状がなく、ある程度進行すると、みぞおち付近の痛み、胃のもたれ、食欲不振、おう吐などが表れるが、飲み過ぎや食べ過ぎの症状と似ており、専門医を訪れる人は少ない。そのうち体重減少や腹部の激痛、消化器官からの出血(吐血や下血)が出てきて、あわてて病院に駆け込む時はかなり進行している場合が多い。
お笑い芸人・雨上がり決死隊の宮迫博之さん(45)は、「ほんま思いつきの検診」で命拾いした。2012年12月、健康診断で胃がんが見つかり、医師から「放置すれば余命半年」と宣告された。胃を3分の2摘出する手術を受け、現在、元気に多くの番組に出ている。がん保険「aflac」のウェブサイトで、人気グループ「嵐」の櫻井翔さんと対談し、「がん発見の幸運さ」をこう語っている。
櫻井「宮迫さん、胃がんだったんですよね」
宮迫「マジか...って思うで。人間ドックに6年ぶりに行ったんですよ。(番組以外の)プライベートでは初めて。ドラマの撮影中だったんですが、雨で2日休みがあったので、急に思い立ちましてね。40歳超えて、周りの芸人たちも体壊すやつおったりして、やっておかな~くらいの軽い気持ちでした。医者から初めて聞いた時は、くら~っときて地面がゆれる感じでした」
小椋佳さん「もし国立病院長と知り合わなかったら」
歌手の小椋佳さん(72)もラッキーだった。2000年に大手術の末、胃がんから生還した。「週刊ポスト」2013年1月1・11日号によると、こうだ。
元来医者嫌いで、長らく健康診断を敬遠してきたが、仕事を通じて国立病院の総長と看護師長に知り合い、「たまたま休みがあったから遊びがてらに」受けた人間ドックでがんが発見された。
「再検査が必要だというので病院へ呼ばれ、そのまま入院。朝から病室に専門医が入れ替わり立ち替わり来るから、おかしいと思っていたら、入院説明書の病名欄に『胃がん』と書いてあるのが見えてしまった」
手術は8時間に及び、胃の4分の3を切除。胃だけでなく周囲も相当取った。迷走神経をすべて切り、胆嚢と副腎も切ったという。
「転移など後々不都合がないようにまとめてみんなやっちゃおうということでね。胃を切ったおかげで食べる量が減り、糖尿病の心配もなくなりました。もちろん、今は1か月に1度検診を受けていますよ」
黒木奈々さん「若い自分の健康を過信していました」
一方、「美人薄命」の悲劇が世間の涙を集めたのが、2015年9月、胃がんでなくなったニュースキャスターの黒木奈々さんだ。享年32だった。黒木さんの遺作本「未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター」などによると、2014年7月、友人と食事中に「お腹を突き刺されるような激痛」が走り入院。急性胃潰瘍と診断されたが、手術準備の検査中に胃がんが見つかった。発症から3年が経過、リンパ腺に転移していると伝えられた。
黒木さんは最後まで復帰の希望を捨てなかったが、自省の念を込めてこう書いている。
「フリーだったのでここ数年、健康診断を受けていませんでした。若い頃から、自分の健康を過信していました」
胃がんの専門医は、サイトの中でこう強調している。
「胃がんの治療は日本がいま世界をリードしています。検診技術も非常に進んできました。40歳を超えたら、ぜひ毎年1回、胃がんの検診を受けてほしい」