覚醒剤事件を起こした清原和博容疑者(48)について、反ヘイトスピーチの人権擁護活動などをしている神原元弁護士が「被害者」だとツイッター上で指摘して、論議になっている。
「清原(同い年)はダメな奴だと思うが、誰かの権利利益を侵害した訳じゃない」。神原元弁護士は2016年2月5日、こうツイートして論じ始めた。
茂木健一郎やホリエモンも同様な見方示す
神原弁護士によると、犯罪行為とは本来、権利利益を侵害する、つまり人に迷惑をかけることを意味する。しかし、覚醒剤を使うのは、そうした行為に当たらず、病気として強制治療の対象になるだけだとする。清原容疑者についても同様で、「『愚行権』を行使したに過ぎない」と指摘した。
神原弁護士は、「殺人や強姦と違って、彼も被害者だ」として、清原容疑者を批判したり嗤ったりする権利は誰にもないと主張した。
とはいえ、覚醒剤を使えば幻覚が現れるなど恐ろしいので、合法化すべきとまでは言えないとした。覚醒剤が犯罪とされることで使用の抑止力になり、すでに使っている人には逮捕を通じて止めるきっかけになることも認めた。そのうえで、覚醒剤は、再犯率が高いので、使っている人だけの責任にせず、よりよい規制を見つけるべきだと説いている。
同様な議論は、清原容疑者が逮捕されたときから見られる。
脳科学者の茂木健一郎さんは、3日のツイッターやブログで、覚醒剤使用者は被害者であり、「依存症から脱するためのさまざまな厚生プログラムを実施するというアプローチの方が、『禁錮』や『懲役』といった刑罰よりも、結果として社会のためになると思う」と持論を述べた。
実業家の堀江貴文さんも同じ日、情報サイト「NewsPicks」で、「刑務所にいる覚せい剤で実刑判決受けた人の9割は普通の人で禁断症状もありません」「違法となってるので暴力団の資金源になる」と犯罪扱いに疑問を呈した。そして、悪質度は低いので刑務所に入れる意味はないとして、「もっとクレバーな社会的対策があると思う」と言っている。
「自分の意思で使って被害者はない」との声も
直近では、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊さんも、7日のブログで、清原和博容疑者は殺人や暴行をした加害者ではなく被害者だとして、「送られる先は病院や厚生施設であるべきだ」と書いた。
その例として、長谷川さんは、アメリカが取り組んでいる「ドラッグコート」の制度を挙げた。そこでは、裁判官が麻薬中毒者に刑罰を受けるか治療を受けるか選択させ、治療を選べば、更生プログラムの終了時点で公訴を免除されるなどの処置が取られている。
では、そもそも覚醒剤使用は、なぜ犯罪とされるのだろうか。
警視庁のホームページでは、「薬物の恐ろしさ」のタイトルで、その理由を説明している。
そこでは、「薬物の乱用により脳の正常な発達は止まり、突然、笑い出したり、泣きわめいたり、怒ったり不安定な精神状態になります。また、幻覚が現れ、気が変になる場合もあります」として、「依存症になることで、大切な家族や友人に迷惑をかけます」「幻覚や妄想から、他人を発作的に殺したり傷つけるなど凶悪な事件発生の引き金にもなっています」と言っている。
神原元弁護士らの発言については、ネット上でも、「確かに犯罪の本質からは外れるな」「囚人専用の病院に入って治療を受けさせた方がいい」と理解を示す声が出た。
しかし、疑問や批判の方が多く、「自分の意思で使って被害者はない」「錯乱して凶行に及ぶ事もあるから愚行権では済まされない」「実際指さされて、灰皿叩き割って我慢したとか迷惑かけてんじゃん」といった意見が相次いでいる。