世界保健機関(WHO)が2016年2月1日、タバコを吸うシーンがある映画やドラマについて「世界の若者を喫煙に誘導している」として、加盟各国に成人向けに指定するよう勧告した。
日本の人気アニメにも、喫煙シーンが登場する作品が少なくない。どのように扱われるのだろうか。
ディズニーでは全映画からタバコシーンを消した
WHOの勧告に対してインターネット上では、こんな反発が相次いでいる。
「もう『名探偵コナン』も『ルパン三世』も『紅の豚』もお子さま禁止ではありませんか。過剰すぎやしません?」
「俺が10代で見た素晴らしい映画はほぼ喫煙シーンがある。それが10代で見られなくなるなんて、そんな世界終わっているよ」
「健康に悪いというなら、タバコのシーンがある映画を規制するのではなく、タバコの製造を規制した方がいいんじゃないの?」
WHOによると、「2014年のハリウッド映画のうち喫煙シーンのある作品が40%にのぼったほか、喫煙を始めた未成年のうち37%が映画をきっかけにタバコを吸い始めたという調査がある」という。日本のアニメの多くにも喫煙シーンがあり、WHOはこうした映画を規制して未成年の喫煙を抑える考えだ。
ウォルト・ディズニー・スタジオのボブ・アイガー会長兼CEO(最高経営責任者)は2015年3月、ディズニーの子ども向け映画に喫煙シーンを入れることを禁止すると発表した。これは傘下であるマーベル・スタジオ、ルーカスフィルム、ピクサー・アニメーション・スタジオすべてに徹底させる。喫煙シーンを映画から追放する動きは世界的趨勢になっている。
しかし、日本ではアニメのキャラでいつもタバコを口にくわえるヘビースモーカーが依然として多い。「ワンピース(ONE PIECE)」ではサンジ、クロコダイル、スモーカーなど。スモーカーに至っては口の両側に2本くわえている。「ルパン三世」では次元大介。ルパン三世と銭型警部、石川五ェ門も時々吸うから、主要人物はほとんどが喫煙者。「銀魂」では土方十四郎。「NANA-ナナ」ではヒロインの大崎ナナをはじめ、女性キャラの大半がいつも煙をくゆらせる。
結核の妻の横でタバコを吸う「風立ちぬ」に賛否両論
2013年8月、スタジオジブリ制作の「風立ちぬ」が公開された時、あまりに喫煙シーンが多いため、NPO法人・日本禁煙学会が「子どもに与える影響に配慮してほしい」という要望書を制作側に求めて話題になった。同学会が特に問題にしたのは、病室で寝ている結核患者の妻の傍らで主人公が喫煙するシーンと、未成年の学生たちがもらいタバコをするシーン。
当時、ネット上では、
「たしかに煙の多いシーンが続き、気持ちが悪くなった」
という声があった半面、
「(戦中・終戦直後という)時代背景を考えると公共の場での喫煙が当たり前で、学生のもらいタバコも死と隣り合わせの極限状態での友情を表現している。現代の価値観で批判するのは的外れだし、表現の自由の侵害だ」
と制作側を擁護する声があった。
いずれにしろ、「ワンピース」や「ルパン三世」のくわえタバコも、米国などでの上映ではキャンディーや爪楊枝をくわえるシーンに替えられているという。2020年の東京五輪・パラリンピックを前に、IOC(国際オリンピック委員会)が掲げる「タバコのない五輪」を目指すため、政府や東京都は「禁煙対策」を迫られている。アニメのキャラにも余波がくるかも。