【男と女の相談室】家の中で寝ているうちに凍死する 手足温かい人は体の冷えを疑え

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   「あっ、お爺ちゃんの手、温かい~」。寒い時にお年寄りの手を握ると、ポカポカしていることがよくある。しかし、喜ぶのは禁物だ。低体温症という恐ろしい病気のせいで、体温調節がうまくいっていない可能性がある。

   寒い冬場に室内でも凍死する事故が相次いでいるので、注意して見守ってあげよう。

  • 低体温症の危険は室内の方が高い
    低体温症の危険は室内の方が高い
  • 低体温症の危険は室内の方が高い

「冷え性」とは別物、体の芯から冷たくなる

   2016年1月下旬、世界的な大寒波が各国を襲い、台湾では70人以上が凍死、香港でも80人以上が低体温症のため山で動けなくなり救助された。凍死事故が頻発した米国では、国立衛生研究所が1月25日、高齢者の低体温症対策をまとめ緊急発表した。次の4項目の実践的な内容だ。

(1)寒い中、外出する場合は、帽子とマフラー、手袋またはミトンを着用し、頭や手から体温が逃げないようにする。特に頭から体温が逃げやすいので、帽子は重要だ。
(2)しっかり充電した携帯電話を持ち、外出することを誰かに知らせておく。
(3)室内にいる時も、確実に適切な温度が保たれるようにする。室温は20度以上が望ましい。
(4)室内で暖かく過ごすため長袖の下着、靴下、室内履きを着用する。足や肩にブランケットなどをかけ、室内でも帽子をかぶるべきだ。

   低体温症とはどんな病気なのだろうか。専門医のサイトによると、子どもの3割、高齢者の4割にみられるありふれた病気である。女性に多い「冷え性」とは、似ているようでまったく違う。

   体には体温を一定に保つ仕組みがある。脳、心臓、胃、腸、肝臓など重要な臓器が収められている体の中心部は、37度に保たれるのが適温だ。寒さで体温が奪われそうになると、体をぶるぶる震わせて筋肉で熱をつくり、手先や足先の毛細血管を収縮させ、温かい血液を中に閉じ込めて熱が逃げるのを防ぐ。

   「冷え性」は、体の中心部は37度に正常に保たれているが、様々な原因により手先や足先の毛細血管の収縮がうまくいかず、手足が冷たくなる人が多い。しかし、手足が冷たいことは本人には辛いが、手足から熱が逃げないので、体の深部の温度は守られているわけだ。

   一方、「低体温症」は、体の中で熱をつくる機能がうまく働かず、もともと中心部が35~36度以下と、正常より1~2度以上低い人をいう。わずか1~2度の違いだが、体温の低下が免疫機能を悪化させ、感染症にかかりやすい。たった1.5度低いだけで、心筋梗塞などの重い心臓病のリスクを2~3倍高めるという研究報告もある。

ロレツが回らなくなったら救急車を呼ぼう

   特に高齢者は、血管が硬くなって毛細血管が収縮しなくなり、寒い時でも熱を逃がさないシステムが働かなくなりがちだ。手を触るとポカポカしているのは、熱が手の表面から逃げているためだ。そのうえ手足が温かいので、本人は体の深部の体温低下に気づきにくい。厚着などの保温対策を怠っているうちにどんどん体が冷たくなっていく。

   実は、凍死などの重大症状は屋外より室内の方が多い。2011年に日本救急医学会が発表した全国の低体温症による救急搬送事例報告では、屋内での発症者が屋外の3倍で、患者の平均年齢は71歳だった。屋内だと薄着になるので、冷たさの自覚がないまま体温低下が進行しやすい。また睡眠中に体温が下がるケースも多い。家族の目の前で突然、ブルブル震えて倒れる人も珍しくない。

   米国立衛生研究所は、4項目の予防対策と同時に、「高齢者の低体温症の危険な兆候」として次の項目をあげ、「すぐ救急車を呼ぼう」と注意を喚起した。

(1)喋り方がいつもより遅い。
(2)ロレツが回らない。
(3)腕や足が震え、または硬直する。
(4)体を思うように動かせない。
(5)眠気・混乱・反応の鈍さ・脈の弱さなどがある。

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