日経・読売の「支持」vs朝日・毎日の「批判」
市場と同様、大手紙の論調も評価は分かれている。決定翌日、一斉に取り上げた社説(産経は「主張」)を見ると、日経が「デフレ局面に戻る事態は避けなければならない。そのための日銀の対応は理解できる」、読売も「日銀が機動的な対応を取ったことは評価できる」と、日銀の決定をひとまず支持するのに対し、朝日は「内外経済が不安定になるたびに、新たなサプライズを市場に与える今のやり方がいつまでも続けられるとは思えない。その手法はいよいよ限界にきている」、毎日は見出しからして「苦しまぎれの冒険だ」として、「米国よりはるかに大胆な緩和策を続ける黒田日銀はこの先どこまで突き進むのか。不安は募る一方である」と批判。産経は「世界市場の混乱で脱デフレが滞る事態を絶対に避けるという、強い決意の表れである」と、否定はしない表現だった。
ただ、社説をよく読むと、日銀の決定に理解を示す社も含め、懐疑的な見方に大差はない。マイナス金利導入の背景について、「効果がはっきりしない政策に頼らざるをえなくなっている日銀の苦しい事情が見える」(朝日)、「従来の異次元緩和策が期待した効果を上げずに行き詰まったから、である」(毎日)、「安倍晋三政権が期待するほどには経済再生を果たせていないことを示している」(産経)など、厳しい指摘が並ぶ。
効果についても、「金利はすでに超低水準にあり、わずかな追加的低下が、設備投資や消費を刺激して物価を押し上げるとは思えない」(毎日)、「巨額の内部留保を抱える大企業は、資金不足で投資を控えているわけではない」(読売)、押し並べてマイナス金利で投資などが増えることを疑問視している。
実際の効果では、株価の押し上げへの期待が大きい。「金利水準が全体的に下がれば、リスクをとっても利益を得たい投資家の動きが活発となり、円高の防止や株価を押し上げることが期待できるのではないか」(読売)というわけだ。ただし、「マイナス金利により仮に株が上がっても、企業の収益力アップによるものではないから、逆回転し始めたときの反動が大きくなる危険がある」(エコノミスト)。
劇薬は、やはり危ういということか。