多くの人が悩む便秘に、ロダンの「考える人」の姿勢でいきむのが一番出やすいと昔からいわれてきたが、理由はよくわかっていなかった。そのメカニズムを医学的に証明する研究が、米の医学誌「Techniques in Coloproctology」の2016年2月号に発表された。
論文を発表したのは、米フロリダ州のクリーブランド・クリニック・フロリダ大腸外科の高野正太医師らのチーム。
あの姿勢が便のふたをこじ開けてくれる
まず、排便の仕組みを簡単に説明しよう。直腸と肛門の間には肛門直腸角があり、立ったり寝たりする普通の姿勢の時は、直腸の末端が鋭角(90度以内)に折れ曲がっている。水道ホースを折り曲げると水が出にくくなるのと同様、便が簡単に外に漏れないよう蓋(ふた)の役割をするのだ。
しゃがんで排便する時は、この肛門直腸角が鈍角(90度以上)に開き、便が出やすくなるという仕組みだ。そして、この角度が180度に近くなり、直腸が真っ直ぐになるほどスムーズに便が出るというわけだ。
高野医師らは、診察中に通常の座位姿勢では排便できなかった22人を対象に、ロダンの「考える人」の姿勢で排便するとうまくいくかどうか試してみた。
22人にはバリウムペーストを飲ませ、いきんでいる最中の内臓や筋肉の動きを、画像透視装置を使って観察した。その結果、通常の座位では排便できなかった22人中、11人が「考える人」の姿勢で完全に排出することができた。
「考える人」の姿勢の最中、肛門直腸角の角度は平均134度で、通常の座位の113度より広かった。また、肛門直腸角を広げる働きをする恥骨直腸筋の長さを比較すると、「考える人」の姿勢では平均15.2センチで、通常の座位の12.9センチより大きく伸びていた。つまり、「考える人」の姿勢が、便の蓋(ふた)をこじ開ける効果があることが立証されたのだ。
ちなみに「考える人」の姿勢は、具体的にはこんな感じだ。
(1)便器に座り、かなり前傾姿勢になり、両肘を膝の上に置く。通常の座位より前かがみになるため肛門直腸角が広がる。
(2)両足のかかとを高く上げる。これにより腹筋に力が入り、いきんで腸を引き締め、恥骨直腸筋を伸ばしやすくなる。
困った時は、ぜひためしてみよう。