「監督をしたい」との強い思い
ところが、名声の割にはプロ野球の指導者としての声が全くといっていいほどオファーはなかった。「監督をしたい」との強い思いと大変な距離があったように見えた。
「引退して目標がなくなったが、それは巨人で打てないときボロクソに言われたときよりきつい」
清原の述懐である。子供のころからずっと周りに人がいたのが、ユニホームを脱いだ途端、自分一人になり、先行きに不安が生じる。実績のない選手だったなら野球の世界に別れを告げ、一般社会で再出発するのに抵抗はない。
ところが清原のようなスーパースターだった選手は、いつまでも野球にこだわる。それで望む仕事がなければおかしくなるのだろう。バットで相手投手を打ち込めば褒め称えられる勝負の世界とは、まるで異なる社会で暮らしていることが理解できなかったのだと思う。
つい先日、日本野球機構(NPB)は、若手選手を対象に「引退後のセカンドキャリアに対する意識調査」を行った。「引退後に不安」が72・7%で前回よりも3・4%増えた。「引退後の希望進路」では、1位と2位が「高校野球の指導者」「大学・社会人野球の指導者」。
野球の世界で生きたいとの願望がやはり強い。現実的にはプロでもアマでも指導者になるのは狭き門であって、希望を叶えることができるのは一握りの中の一握りといったところだろう。
裁判で処分を受けた後、それこそ独自に生きなければならなくなる。NPBはこのキャンプで野球賭博など有害行為にかんする講習会に、薬物使用のメニューを加えた。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)